養生訓 / 巻第四・飲食下
一一切の食物の内、園菜極めて穢はし。其根葉に久しくそみ入りたる糞汚、俄に去りがたし。水桶を定め置き、水を多く入れて、菜をひたし、上におもりをおき、一夜か一日か漬け置き取出し、刷子を以て、其根葉莖をすり洗ひ、淸くして食すべし。此事、近年李笠翁が書に見えたり。もろこしには、神を祭るに園菜を用ひずして、山菜水菜を用ふ。園菜も、瓜茄子、壺盧、冬瓜などはけがれなし。
新字:一一切の食物の内、園菜極めて穢はし。其根葉に久しくそみ入りたる糞汚、俄に去りがたし。水桶を定め置き、水を多く入れて、菜をひたし、上におもりをおき、一夜か一日か漬け置き取出し、刷子を以て、其根葉茎をすり洗ひ、清くして食すべし。此事、近年李笠翁が書に見えたり。もろこしには、神を祭るに園菜を用ひずして、山菜水菜を用ふ。園菜も、瓜茄子、壺盧、冬瓜などはけがれなし。
書き下し
一一切の食物の内、園菜極めて穢はし。其根葉に久しくそみ入りたる糞汚、俄に去りがたし。水桶を定め置き、水を多く入れて、菜をひたし、上におもりをおき、一夜か一日か漬け置き取出し、刷子を以て、其根葉茎をすり洗ひ、清くして食すべし。此事、近年李笠翁が書に見えたり。もろこしには、神を祭るに園菜を用ひずして、山菜水菜を用ふ。園菜も、瓜茄子、壺盧、冬瓜などはけがれなし。
現代語訳
あらゆる食物の中で、畑の野菜はきわめて汚れています。根や葉に長くしみこんだ糞の汚れは、すぐには取れません。水桶を決めておき、水をたっぷり入れて菜をひたし、上に重しをのせて、一晩か一日漬けておいてから取り出し、刷毛でその根・葉・茎をこすり洗って、きれいにしてから食べるべきです。このことは、近年、李笠翁の書物に見えます。中国では、神を祭るのに畑の野菜を用いず、山菜や水辺の菜を用います。畑の野菜でも、瓜、茄子、瓢箪、冬瓜などは汚れていません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一蘿蔔は菜中の上品なり。つねに食ふべし。葉のこはきを去り、やはらかなる葉と根と、豆豉にて煮、熟して食ふ。脾を補ひ、痰を去り、気をめぐらす。大根の生しく辛きを食すれば気へる。然れども、食滞ある時は、少し食して害なし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一松蕈、竹筍、豆腐など、味すぐれたる野菜は、只一種煮て食すべし。他物と両種合せ煮れば味おとる。李笠翁が閑情寓寄にかくいへり。味あしければ腸胃に相応せずして、養とならず。一餻餌の新に成りて、再び煮ず、あぶらずして、即ち食するは、消化しがたし。蒸したるより煮たるが、やはらかにして消化しやすし。餻は数日の後焼き煮て食ふに宜し。一朝食肥濃の物ならば、晩食は必ず淡薄に宜し。晩食豊腴ならば、明朝の食は軽くすべし。一諸の食物、陽気の生理ある新しきを食ふべし、毒なし。日久しく歴たる陰気鬱滞せる物、食ふべからず、害あり。煮過して飪を失へるも同じ。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃虚して生菜を忌む人は、乾菜を煮食ふべし。冬月蘿蔔をうすく切りて、生ながら日に乾す。蓮根、牛蒡、薯蕷、うどの根、いづれもうすく切りて煑てほす。椎蕈、松露、石茸も、乾したるよし。松蕈、塩漬よし。壺盧切りて塩に一夜つけ、おしをかけ置きて、ほしたるがよし。瓠畜もよし。白芋の茎、熱湯をかけ日にほす。是皆虚人の食するに宜し。枸杞、五加、莧菊蘿摩、鼓子花葉など、わか葉をむし、煑てほしたるをあつ物とし、味噌にてあへ物とす。菊花は生にてほす。皆虚人に宜し。老葉はこはし。海菜は冷性なり。老人虚人に宜しからず。昆布多く食へば気をふさぐ。
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『養生訓』巻第四・飲食下一一切の食、陰気の鬱滞せる物は毒あり、食ふべからず。郷党篇にいへる、聖人の食し給はざる物、皆陽気を失ひて、陰物となれるなり。穀肉など、ふたをして時を経たるは、陰鬱の気にて味を変ず。魚鳥の肉など、久しく時をへたる、又塩につけて久しくして色臭味変ず。是皆陽気を失へるなり。菜蔬など、久しければ生気を失ひて、味変ず。如此なるは皆陰物なり、腸胃に害あり。又害なきも補養をなさず。水など新に汲むは、陽気さかんにて生気あり。久しきを歴れば、陰物となり、生気を失ふ。一切の飲食、生気を失ひて、味と臭と色と少しにてもかはりたるは、食ふべからず。干して色かはりたると、塩に浸して不損とは陰物にあらず、食ふに害なし。然れども乾物の気のぬけたると、塩蔵の久しくして、色臭味変じたるも、皆陰物なり、食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
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『養生訓』巻第四・飲食下一炙肉すでに炙りて、又熱湯に少しひたし、水毒を去りて食ふべし。不然ば津液をかわかす。又能く喉痹を発す。一茄子、本草等の書に、性不好と云ふ。生なるは毒あり、食ふべからず。煮たるも、瘧痢傷寒などには誠に忌むべし。他病には、皮を去り、切りて米泔に浸し、一夜か半日を歴て、やはらかに煮て食す、害なし。葛粉、水に溲ねて、切りて線条とし、水にて煮又豉汁に堅魚の末を加へ、再び煮て食す。瀉を止め胃を補ふ。保養に益あり。一胃虚弱の人は、蘿蔔、胡蘿蔔、芋、薯蕷、牛蒡など、うすく切りてよく煮たる、食ふべし。大にあつく切りたると、煮ていまだ熟せざると、皆脾胃をやぶる。一度うす豆豉か薄じやうゆにて煮、其汁にひたし置き、半日か一夜か間置きて、再び前の汁にて煮れば、大に切りたるも害なし、味よし。鶏肉、野猪肉なども如此すべし。
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