養生訓 / 巻第三・飲食上
一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。溫補して氣をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、氣をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
新字:一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
書き下し
一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
現代語訳
食は身を養うものです。身を養うもので、かえって身を損なってはいけません。ですから、およそ食べ物は、性質がよく身を養うのに益のある物を、常に選んで食べなさい。益がなく損のある物は、味がよくても食べてはいけません。温めて補い、気をふさがない物は益があります。生もので冷えて下痢をさせ、気をふさいで腹を張らせる物、辛くて熱のある物は、みな損があります。
解説
食べ物を選ぶ基準を「味」ではなく「身を養う益があるかどうか」に置いた条です。身を養うための食で身を損なうのは本末転倒だという論理は明快です。温めて補う物を益とし、生もので冷やす物や辛く熱のある物を損とするのは、食物の性質を寒熱で見る本草学の考えによります。益軒は本草学者として『大和本草』を著しており、食物の性質に詳しい人でした。美味しさだけで選ばず、体に合うかを考えて食べるという姿勢は、今の食品選びにもそのまま通じます。
この章句が説くこと
養生食物益本草選択
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