養生訓 / 巻第三・飲食上
一脾胃虚して生菜を忌む人は、乾菜を煮食ふべし。冬月蘿蔔をうすく切りて、生ながら日に乾す。蓮根、牛蒡、薯蕷、うどの根、いづれもうすく切りて煑てほす。椎蕈、松露、石茸も、乾したるよし。松蕈、鹽漬よし。壺盧切りて鹽に一夜つけ、おしをかけ置きて、ほしたるがよし。瓠畜もよし。白芋の莖、熱湯をかけ日にほす。是皆虚人の食するに宜し。枸杞、五加、莧菊蘿摩、鼓子花葉など、わか葉をむし、煑てほしたるをあつ物とし、味噌にてあへ物とす。菊花は生にてほす。皆虛人に宜し。老葉はこはし。海菜は冷性なり。老人虛人に宜しからず。昆布多く食へば氣をふさぐ。
新字:一脾胃虚して生菜を忌む人は、乾菜を煮食ふべし。冬月蘿蔔をうすく切りて、生ながら日に乾す。蓮根、牛蒡、薯蕷、うどの根、いづれもうすく切りて煑てほす。椎蕈、松露、石茸も、乾したるよし。松蕈、塩漬よし。壺盧切りて塩に一夜つけ、おしをかけ置きて、ほしたるがよし。瓠畜もよし。白芋の茎、熱湯をかけ日にほす。是皆虚人の食するに宜し。枸杞、五加、莧菊蘿摩、鼓子花葉など、わか葉をむし、煑てほしたるをあつ物とし、味噌にてあへ物とす。菊花は生にてほす。皆虚人に宜し。老葉はこはし。海菜は冷性なり。老人虚人に宜しからず。昆布多く食へば気をふさぐ。
書き下し
一脾胃虚して生菜を忌む人は、乾菜を煮食ふべし。冬月蘿蔔をうすく切りて、生ながら日に乾す。蓮根、牛蒡、薯蕷、うどの根、いづれもうすく切りて煑てほす。椎蕈、松露、石茸も、乾したるよし。松蕈、塩漬よし。壺盧切りて塩に一夜つけ、おしをかけ置きて、ほしたるがよし。瓠畜もよし。白芋の茎、熱湯をかけ日にほす。是皆虚人の食するに宜し。枸杞、五加、莧菊蘿摩、鼓子花葉など、わか葉をむし、煑てほしたるをあつ物とし、味噌にてあへ物とす。菊花は生にてほす。皆虚人に宜し。老葉はこはし。海菜は冷性なり。老人虚人に宜しからず。昆布多く食へば気をふさぐ。
現代語訳
脾胃が弱くて生野菜を避ける人は、干した野菜を煮て食べなさい。冬に大根を薄く切って、生のまま日に干します。蓮根・ごぼう・山芋・うどの根は、いずれも薄く切って煮てから干します。椎茸・松露・岩茸も干したものがよいのです。松茸は塩漬けがよいのです。夕顔を切って塩に一晩漬け、重しをかけておいて干したものがよいのです。かんぴょうもよいのです。白芋の茎は熱湯をかけて日に干します。これらはみな虚弱な人が食べるのに合います。くこ・うこぎ・ひゆ・菊・ががいも・ひるがおの葉などは、若葉を蒸し、煮て干したものを汁物にし、味噌で和え物にします。菊の花は生のまま干します。みな虚弱な人に合います。古い葉は硬いのです。海藻は冷える性質です。老人や虚弱な人には合いません。昆布を多く食べると気をふさぎます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一蘿蔔は菜中の上品なり。つねに食ふべし。葉のこはきを去り、やはらかなる葉と根と、豆豉にて煮、熟して食ふ。脾を補ひ、痰を去り、気をめぐらす。大根の生しく辛きを食すれば気へる。然れども、食滞ある時は、少し食して害なし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一炙肉すでに炙りて、又熱湯に少しひたし、水毒を去りて食ふべし。不然ば津液をかわかす。又能く喉痹を発す。一茄子、本草等の書に、性不好と云ふ。生なるは毒あり、食ふべからず。煮たるも、瘧痢傷寒などには誠に忌むべし。他病には、皮を去り、切りて米泔に浸し、一夜か半日を歴て、やはらかに煮て食す、害なし。葛粉、水に溲ねて、切りて線条とし、水にて煮又豉汁に堅魚の末を加へ、再び煮て食す。瀉を止め胃を補ふ。保養に益あり。一胃虚弱の人は、蘿蔔、胡蘿蔔、芋、薯蕷、牛蒡など、うすく切りてよく煮たる、食ふべし。大にあつく切りたると、煮ていまだ熟せざると、皆脾胃をやぶる。一度うす豆豉か薄じやうゆにて煮、其汁にひたし置き、半日か一夜か間置きて、再び前の汁にて煮れば、大に切りたるも害なし、味よし。鶏肉、野猪肉なども如此すべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾虚の人は、生魚をあぶりて食するに宜し。煮たるよりつかへず。小魚は煮て食するに宜し。大なる生魚はあぶりて食ひ、或は煎酒を熱くして、生薑わさびなど加へ、浸し食すれば害なし。一大魚は小魚より油多くつかへやすし。脾虚の人は多食すべからず。薄く切りて食へばつかへず。大なる鯉、鮒大に切り、或は全身を煮たるは、気をふさぐ、うすく切るべし。蘿蔔、胡蘿蔔、南瓜、菘根なども、大に厚く切りて煮たるは、つかへやすし。薄く切りて煮るべし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一萊菔、菘薯蕷、芋、慈姑、胡蘿蔔、南瓜、大葱白等の甘き菜は、大に切りて煮食すれば、つかへて気をふさぎ、腹痛す。薄く切るべし。或は辛き物をくはへ、又物により、酢を少し加ふるもよし。再び煮る事を右に記せり。又如此の物、一時に二三品くらふべからず。又甘き菜の類、およそつかへやすき物、つづけ食ふべからず。生魚肥肉、厚味の物、つづけ食ふべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一松蕈、竹筍、豆腐など、味すぐれたる野菜は、只一種煮て食すべし。他物と両種合せ煮れば味おとる。李笠翁が閑情寓寄にかくいへり。味あしければ腸胃に相応せずして、養とならず。一餻餌の新に成りて、再び煮ず、あぶらずして、即ち食するは、消化しがたし。蒸したるより煮たるが、やはらかにして消化しやすし。餻は数日の後焼き煮て食ふに宜し。一朝食肥濃の物ならば、晩食は必ず淡薄に宜し。晩食豊腴ならば、明朝の食は軽くすべし。一諸の食物、陽気の生理ある新しきを食ふべし、毒なし。日久しく歴たる陰気鬱滞せる物、食ふべからず、害あり。煮過して飪を失へるも同じ。
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『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
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