養生訓 / 巻第四・飲食下
一空腹に生菓食ふべからず、つくり菓子多く食ふべからず。脾胃の陽氣を損ず。一勞倦して多く食すれば、必ず睡り臥す事をこのむ。食して卽ち臥しねぶれば、食氣塞りてめぐらず、消化しがたくして病となる。故に勞倦したる時は食ふべからず。勞をやめて後食ふべし。食してねむらざるがため也。
新字:一空腹に生菓食ふべからず、つくり菓子多く食ふべからず。脾胃の陽気を損ず。一労倦して多く食すれば、必ず睡り臥す事をこのむ。食して即ち臥しねぶれば、食気塞りてめぐらず、消化しがたくして病となる。故に労倦したる時は食ふべからず。労をやめて後食ふべし。食してねむらざるがため也。
書き下し
一空腹に生菓食ふべからず、つくり菓子多く食ふべからず。脾胃の陽気を損ず。一労倦して多く食すれば、必ず睡り臥す事をこのむ。食して即ち臥しねぶれば、食気塞りてめぐらず、消化しがたくして病となる。故に労倦したる時は食ふべからず。労をやめて後食ふべし。食してねむらざるがため也。
現代語訳
空腹のときに生の果物を食べてはいけませんし、作り菓子を多く食べてはいけません。脾胃の陽気をそこないます。疲れ切ったときに多く食べると、必ず横になって眠りたくなります。食べてすぐに横になって眠ると、食べた物の気がふさがってめぐらず、消化しにくくなって病となります。ですから、疲れ切っているときは食べてはいけません。疲れを休めてから食べるべきです。食べてすぐ眠らないようにするためです。
解説
空腹時の生もの・甘い物と、疲労時の食事を戒めた単位です。空腹に冷たい果物や菓子を入れると胃腸の働きを弱めるという注意に続き、疲れたときに食べるとすぐ眠くなり、食後すぐ寝ることで消化が滞るという因果を順に説明しています。頭注によれば清の李漁の随筆にも同じ趣旨があります。仕事で疲れ果てて帰宅し、急いで食べてそのまま寝てしまう生活は珍しくありませんが、少し体を休めてから食べるだけでも胃腸の負担は変わります。
この章句が説くこと
疲労睡眠消化果物脾胃
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一うゑて食し、かわきて飲むに、飢渇にまかせて、一時に多く飲食すれば、飽満して脾胃をやぶり、元気をそこなふ。飢渇の時慎むべし。又飲食いまだ消化せざるに、又いやかさねに早く飲食すれば、滞りて害となる。よく消化して後、飲食を好む時、飲み食ふべし。如此すれば、飲食皆養となる。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃のきらふ物は、生しき物、冷なる物、こはき物、ねばる物、けがらはしく清からざる物、くさき物、煑ていまだ熟せざる物、煑過して飪を失へる物、煮て久しくなるもの、菓のいまだ熟せざる物、ふるくして正味を失へる物、五味の偏なる物、あぶら多くして味おもきもの、是皆脾胃のきらふ物なり。是をくらへば脾胃を損ず、食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一夜食する人は、暮れて後早く食すべし。深更にいたりて食すべからず。酒食の気よくめぐり、消化して後臥すべし。消化せざる内に早くふせば、病となる。夜食せざる人晩食の後早く臥すべからず。早く臥せば、食気とどこほり病となる。凡夜は身をうごかす時にあらず。飲食の養を用ひず、少しうゑても害なし。もしやむ事を得ずして夜食すとも、早くして少しきに宜し。夜酒は飲むべからず。若飲むとも、早くして少しのむべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一飲食は身を養ひ、ねぶり臥すは気を養ふ。しかれども、飲食節に過ぐれば脾胃をそこなふ。ねぶり臥す事時ならざれば元気をそこなふ。此二は、身を養はんとして、かへつて身をそこなふ。よく生を養ふ人は、つとに起きよはに寝ねて、昼いねず、常にわざをつとめて怠らず、ねぶり臥す事をすくなくして神気をいさぎよくし、飲食をすくなくして腹中を清虚にす。かくのごとくなれば、元気よくめぐり、ふさがらずして病生ぜず。発生の気其養を得て、血気おのづからさかんにして病なし。是寝食の二の節に当れるは、また養生の要なり。
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『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
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『養生訓』巻第四・飲食下一諸菓寒具など、炙り食へば害なし。味も可なり。甜瓜は核を去りて蒸し食す。味よくして胃をやぶらず。熟柿も、木練も、皮共に熱湯にてあたため食すべし。乾柿はあぶり食ふべし。皆脾胃虚の人に害なし。梨子は大寒なり。蒸し煮て食すれば性やはらぐ。胃虚寒の人は食ふべからず。
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