養生訓 / 巻第四・飲食下
一老人虛人不可食物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麵、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法不好と、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の發生の氣をそこなふ。
新字:一老人虚人不可食物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法不好と、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
書き下し
一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
現代語訳
老人や虚弱な人が食べてはならない物は次のとおりです。生もの・冷たい物、硬い物、ねばりの強い物、油っこい物、冷麦、冷えて硬くなった餅や団子、粽、冷えた饅頭、ならびに糯米の飯、生味噌、作り方のよくない甘酒や冷えた甘酒。また鯨、鰯、鮪、魳(かます)、生の果物は、みな脾胃の生き生きとした気をそこないます。
解説
老人や体の弱い人が避けるべき食べ物を挙げた条です。冷たい物、硬い物、粘る物、脂っこい物という四つの性質がまず示され、そのあとに具体的な品が続きます。どれも消化に手間がかかり、弱った胃腸の働きをそこなうものです。益軒自身がこれを書いたのは八十四歳のときで、老いた体への実感がこもっています。高齢の家族の食事を用意するとき、温かく、やわらかく、脂の少ない物を中心にするという方針は、今の介護食の考え方にも通じます。
この章句が説くこと
老人虚弱脾胃食禁消化
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃のきらふ物は、生しき物、冷なる物、こはき物、ねばる物、けがらはしく清からざる物、くさき物、煑ていまだ熟せざる物、煑過して飪を失へる物、煮て久しくなるもの、菓のいまだ熟せざる物、ふるくして正味を失へる物、五味の偏なる物、あぶら多くして味おもきもの、是皆脾胃のきらふ物なり。是をくらへば脾胃を損ず、食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃虚弱の人、老人などは、餅、餐、饅頭などの類、堅くして冷えたる物くらふべからず。消化しがたし。つくりたる菓子、生菓子の類、くらふ事斟酌すべし。折により人によりて、甚害あり。晩食の後殊に忌むべし。一古人、寒月朝ごとに、性平和なる薬酒を少しのむべし、立春以後はやむべしといへり。人により宜しかるべし。焼酒にて醸したる薬酒は用ふべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一凡の人、食ふべからざる物。生冷の物、堅硬の物、未熟物、ねばき物、ふるくして気味の変じたる物、製法心に叶はざる物、塩からき物、酢の過ぎたる物、飪を失へる物、臭悪しき物、色悪しき物、味変じたる物、魚餒れ肉敗れたる、豆腐の日を歴たると味あしきと、飪を失へると冷えたると、索麪に油あると、諸品煮て未熟と、有灰酒、酸味ある酒、いまだ時ならずして熟せざる物、すでに時過ぎたる物、食ふべからず。夏月、雉食ふべからず。魚鳥の皮こはき物、脂多き物、甚なまぐさき物、諸魚二目同じからざる物、腹下に丹の字ある物、諸鳥みづから死して足伸びざる物、諸獣毒箭にあたりたる物、諸鳥毒をくらつて死したる物、肉の脯、屋漏水にぬれたる物、米器の内に入れ置きたる物、肉汁を器に入れ置きて気をとぢたる物、皆毒あり。肉脯、幷に塩に漬けたる肉、夏を歴て臭味あしき、皆食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
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『養生訓』巻第八・養老一衰老の人は脾胃よわし。夏月は尤慎みて保養すべし。暑熱によりて、生冷の物をくらへば泄瀉しやすし。瘧痢もおそるべし。一たび病すれば大にやぶれて、元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又寒月は、老人は陽気すくなくして、寒邪にやぶられやすし。心を用ひてふせぐべし。
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『養生訓』巻第八・養老一老人は、大風雨大寒暑大陰霧の時、外に出づべからず。かかる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。一老いては、脾胃の気衰へよわくなる。食すくなきに宜し、多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆食傷なり。わかくして脾胃つよき時に、ならひて食過ぐれば、消化しがたく、元気ふさがり病おこりて死す。つつしみて食を過すべからず。ねばき飯こはき飯、もち、だんご、麪類、糯の飯、獣の肉、凡消化しがたき物を多くくらふべからず。
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