養生訓 / 巻第四・飲食下
一朝夕の食、鹽味をくらふ事すくなければ、のんどかわかず、湯茶を多くのまず。脾に濕を生ぜずして、胃氣發生しやすし。一中華朝鮮の人は脾胃つよし。飯多く食し、六畜の肉を多く食つても害なし。日本の人は是にことなり、多く穀肉を食すればやぶられやすし。是日本人の、異國の人より體氣よわき故なり。
新字:一朝夕の食、塩味をくらふ事すくなければ、のんどかわかず、湯茶を多くのまず。脾に湿を生ぜずして、胃気発生しやすし。一中華朝鮮の人は脾胃つよし。飯多く食し、六畜の肉を多く食つても害なし。日本の人は是にことなり、多く穀肉を食すればやぶられやすし。是日本人の、異国の人より体気よわき故なり。
書き下し
一朝夕の食、塩味をくらふ事すくなければ、のんどかわかず、湯茶を多くのまず。脾に湿を生ぜずして、胃気発生しやすし。一中華朝鮮の人は脾胃つよし。飯多く食し、六畜の肉を多く食つても害なし。日本の人は是にことなり、多く穀肉を食すればやぶられやすし。是日本人の、異国の人より体気よわき故なり。
現代語訳
朝夕の食事で塩味をとることが少なければ、のどが渇かず、湯茶を多く飲みません。脾に湿を生じないので、胃の気が生き生きと働きやすくなります。中国や朝鮮の人は脾胃が強いものです。飯を多く食べ、家畜の肉を多く食べても害がありません。日本人はこれと異なり、穀物や肉を多く食べるとこわされやすいのです。これは日本人が外国の人より体質が弱いためです。
解説
塩分を控えることと、日本人の体質に合った食べ方を説いた単位です。塩を減らせばのどが渇かず、水分をとり過ぎて胃腸に湿がたまることもないという理屈は、益軒の体液観に基づくものです。また、中国や朝鮮の人と比べて日本人は胃腸が弱いので多食を慎めという見方は、薬の分量を論じる巻にも繰り返し出てきます。体質の違いを踏まえて自分に合った量を知るという姿勢は、減塩や食べ過ぎ防止を考える今の私たちにも参考になります。
この章句が説くこと
減塩体質脾胃日本人食事
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一酒食を過し、或は時ならずして飲食し、生冷の物、性あしく病をおこす物を食ひて、しばしば泄瀉すれば、必ず胃気へる。久しくかさなりては、元気衰へて短命なり。つつしむべし。一塩と酢と辛き物と、此三味を多く食ふべからず。此三味を多く食ひ、渇きて湯を多くのめば、湿を生じ脾をやぶる。湯、茶、羹多く飲むべからず。右の三味を食つて、大にかわかば、葛の粉か天花粉を、熱湯にたてて呑んで、渇をとどむべし。多く湯をのむ事をやめんがためなり。葛などのねば湯は気をふさぐ。
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『養生訓』巻第七・用薬一中夏の書、居家必用、居家必備、斉民要術、農政全書、月令広義等に、料理の法を多く載せたり。其載する所、日本の料理に大にかはり、皆肥濃膏腴油膩の具、甘美の饌なり。其食味甚おもし。中土の人は腸胃厚く、禀賦つよき故に、かかる重味を食しても滞塞せず。今世、長崎に来る中夏人も亦如此と云ふ。日本の人は、壮盛にても、かやうの饌食をくらはば、飽満し滞塞して病おこるべし。日本の人の饌食は、淡くしてかろきをよしとす。肥濃甘美の味を多く用ひず。庖人の術も味かろきをよしとし良工とす。是からやまと風気の大に異なる所なり。然れば補薬を小服にし、甘草を減じ棗を少し用ふる事、宜なり。
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『養生訓』巻第三・飲食上一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一五味偏勝とは、一味を多く食ひ過すを云ふ。甘き物多ければ、腹はりいたむ。辛き物過ぐれば、気上りて気へり、瘡を生じ、眼あしし。鹹き物多ければ、血かわき、のんどかわき、湯水多く飲めば、湿を生じ、脾胃をやぶる。苦き物多ければ、脾胃の生気を損ず。酸き物多ければ、気ちぢまる。五味をそなへて、少しづつ食へば、病生ぜず。諸肉も諸菜も、同じ物をつづけて食すれば、滞りて害あり。
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『養生訓』巻第三・飲食上一うゑて食し、かわきて飲むに、飢渇にまかせて、一時に多く飲食すれば、飽満して脾胃をやぶり、元気をそこなふ。飢渇の時慎むべし。又飲食いまだ消化せざるに、又いやかさねに早く飲食すれば、滞りて害となる。よく消化して後、飲食を好む時、飲み食ふべし。如此すれば、飲食皆養となる。
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