養生訓 / 巻第三・飲食上
一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も溫なるべし。冷飮は脾胃をやぶる。冬月も熱飮すべからず。氣を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壯實なる人に宜し。饙は、積聚氣滯ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虛弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滯塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稻は氣を動かす、病人に忌む。晩稻は性かろくしてよし。
新字:一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
書き下し
一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
現代語訳
飯はよく炊けて、芯まで柔らかいのがよいのです。硬くて粘るのを嫌います。温かいのがよいのです。汁物は熱いのがよいのです。酒は夏でも温めて飲むべきです。冷たい飲み物は脾胃を損ないます。冬でも熱すぎるものを飲んではいけません。気をのぼせ血液を減らします。飯を炊くには方法が多くあります。普通の炊き干しは体の丈夫な人に合います。二度炊きの飯は、積聚(腹のしこり)や気の滞りのある人に合います。湯取り飯は脾胃の弱い人に合います。粘って糊のようになったのは滞ります。硬いのは消化しにくいのです。新米の飯は性質が強く、虚弱な人にはよくありません。とくに早稲は気を動かすので、病人には避けます。晩稲は性質が軽くてよいのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃のこのむときらふ物を知りて、好む物を食し、きらふ物を食すべからず。脾胃の好む物は何ぞや。あたたかなる物、やはらかなる物、よく熟したる物、ねばりなき物、味淡くかろき物、にえばなの新に熟したる物、きよき物、新しき物、香よき物、性平和なる物、五味の偏ならざる物、是皆脾胃の好む物なり。是脾胃の養となる、くらふべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃のきらふ物は、生しき物、冷なる物、こはき物、ねばる物、けがらはしく清からざる物、くさき物、煑ていまだ熟せざる物、煑過して飪を失へる物、煮て久しくなるもの、菓のいまだ熟せざる物、ふるくして正味を失へる物、五味の偏なる物、あぶら多くして味おもきもの、是皆脾胃のきらふ物なり。是をくらへば脾胃を損ず、食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
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『養生訓』巻第四・飲酒一凡酒はただ朝夕の飯後にのむべし。昼と夜と空腹に飲むべからず。皆害あり。朝間空腹にのむは、殊更脾胃をやぶる。一凡酒は夏冬ともに冷飲熱飲に宜しからず。温酒を飲むべし。熱飲は気升る。冷飲は痰をあつめ、胃をそこなふ。丹渓は、酒は冷飲に宜しといへり。然れども、多く飲む人冷飲すれば脾胃を損ず。少し飲む人も、冷飲すれば食気を滞らしむ。凡酒をのむは、其温気をかりて陽気を助け、食滞をめぐらさんかためなり。冷飲すれば二の益なし。温酒の陽を助け、気をめぐらすにしかず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一酒食を過し、或は時ならずして飲食し、生冷の物、性あしく病をおこす物を食ひて、しばしば泄瀉すれば、必ず胃気へる。久しくかさなりては、元気衰へて短命なり。つつしむべし。一塩と酢と辛き物と、此三味を多く食ふべからず。此三味を多く食ひ、渇きて湯を多くのめば、湿を生じ脾をやぶる。湯、茶、羹多く飲むべからず。右の三味を食つて、大にかわかば、葛の粉か天花粉を、熱湯にたてて呑んで、渇をとどむべし。多く湯をのむ事をやめんがためなり。葛などのねば湯は気をふさぐ。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃虚弱の人、老人などは、餅、餐、饅頭などの類、堅くして冷えたる物くらふべからず。消化しがたし。つくりたる菓子、生菓子の類、くらふ事斟酌すべし。折により人によりて、甚害あり。晩食の後殊に忌むべし。一古人、寒月朝ごとに、性平和なる薬酒を少しのむべし、立春以後はやむべしといへり。人により宜しかるべし。焼酒にて醸したる薬酒は用ふべからず。
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