養生訓 / 巻第四・飲食下
一飮酒の後、酒氣殘らば、餻餌、諸穀食、寒具、諸菓、醴、油膩の物、甘き物、氣をふさぐ物、飮食すべからず。酒氣めぐり盡きて後、飮食すべし。一鳥獸のこはき肉、前日より、豆油及豉汁を以て煮て、其汁を用ひて、翌日再び煮れば、大に切りたるも、やはらかになりて、味よし。つかへず。蘿蔔も亦同じ。
新字:一飲酒の後、酒気残らば、餻餌、諸穀食、寒具、諸菓、醴、油膩の物、甘き物、気をふさぐ物、飲食すべからず。酒気めぐり尽きて後、飲食すべし。一鳥獣のこはき肉、前日より、豆油及豉汁を以て煮て、其汁を用ひて、翌日再び煮れば、大に切りたるも、やはらかになりて、味よし。つかへず。蘿蔔も亦同じ。
書き下し
一飲酒の後、酒気残らば、餻餌、諸穀食、寒具、諸菓、醴、油膩の物、甘き物、気をふさぐ物、飲食すべからず。酒気めぐり尽きて後、飲食すべし。一鳥獣のこはき肉、前日より、豆油及豉汁を以て煮て、其汁を用ひて、翌日再び煮れば、大に切りたるも、やはらかになりて、味よし。つかへず。蘿蔔も亦同じ。
現代語訳
酒を飲んだ後、酒気が残っているうちは、餅や団子、穀物の食べ物、干菓子、果物、甘酒、油っこい物、甘い物、気をふさぐ物を飲食してはいけません。酒気がめぐりつくしてから飲食すべきです。鳥や獣の硬い肉は、前日から醤油や豆豉の汁で煮て、その汁を使って翌日もう一度煮れば、大きく切ったものでもやわらかくなり、味もよくなります。胃につかえません。大根もまた同じです。
解説
飲酒後の食事と、硬い肉の調理法を述べた単位です。酒が体に残っているうちに甘い物や餅、脂っこい物を重ねると胃腸の負担が増すので、酒気が抜けるまで待てと説きます。飲んだ後の締めの食事を戒める内容として、今の感覚にもよく当てはまります。また、硬い肉や大根を前日に煮て汁ごと置き、翌日煮直すという方法は、煮込み料理の知恵そのものです。調理の工夫で消化しやすくするという発想が、益軒の食の養生の特徴です。
この章句が説くこと
酒消化調理食事養生
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一前食未だ消化せずば、後食相つぐべからず。一薬を服する時、あまき物、油膩の物、獣肉、諸菓、餅餌、生冷の物、一切気を塞ぐ物、食ふべからず。服薬の時多く食へば、薬力とどこほりて力なし。酒は只一盞に止まるべし。補薬を服する日、ことさら此類いむべし。凡薬を服する日は、淡き物を食して、薬力をたすくべし。味濃き物を食して、薬力を損ずべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一怒の後早く食すべからず、食後怒るべからず。憂ひて食すべからず、食して憂ふべからず。一腹中の食いまだ消化せざるに、又食すれば、性よき物も毒となる。腹中空虚になりて食すべし。一永夜寒甚しき時、もし夜飲食して寒を防ぐに宜しくば、晩饌の酒飯を数口減ずべし。又已むことを得ずして人の招に応じ、夜話に人の許に行きて食客とならば、晩饌の酒食をかねて減ずべし。如此にして、夜少し飲食すればやぶれなし、夜食は朝晩より進みやすし。心に任せて、恣にすべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一一切の煑たる者、よく熟して柔なるを食ふべし。こはき物、未熟物、煑過して飪を失へる物、心口にかなはざる物、食ふべからず。一我が家にては、飲食の節慎みやすし。他の饗席にありては、烹調生熟の節、我が心にかなはず、飣品多く過ぎやすし。客となりては、殊に飲食の節つつしむべし。一飯後に、力わざをすべからず、急に道を行くべからず。又馬を馳せ、高きにのぼり、嶮路に上るべからず。
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『養生訓』巻第四・飲酒一凡酒はただ朝夕の飯後にのむべし。昼と夜と空腹に飲むべからず。皆害あり。朝間空腹にのむは、殊更脾胃をやぶる。一凡酒は夏冬ともに冷飲熱飲に宜しからず。温酒を飲むべし。熱飲は気升る。冷飲は痰をあつめ、胃をそこなふ。丹渓は、酒は冷飲に宜しといへり。然れども、多く飲む人冷飲すれば脾胃を損ず。少し飲む人も、冷飲すれば食気を滞らしむ。凡酒をのむは、其温気をかりて陽気を助け、食滞をめぐらさんかためなり。冷飲すれば二の益なし。温酒の陽を助け、気をめぐらすにしかず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
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