養生訓 / 巻第四・飲食下
一薑を八九月食へば、來春眼をうれふ。一豆腐、菎蒻、薯蕷、芋、慈姑、蓮根などの類、豆油にて煮たるもの、旣に冷えて溫ならざるは、食ふべからず。一曉の比、腹中鳴動し、食つかへて、腹中不快ば、朝食を減ずべし。氣をふさぐ物、肉菓など食ふべからず、酒を飮むべからず。
新字:一薑を八九月食へば、来春眼をうれふ。一豆腐、菎蒻、薯蕷、芋、慈姑、蓮根などの類、豆油にて煮たるもの、既に冷えて温ならざるは、食ふべからず。一暁の比、腹中鳴動し、食つかへて、腹中不快ば、朝食を減ずべし。気をふさぐ物、肉菓など食ふべからず、酒を飲むべからず。
書き下し
一薑を八九月食へば、来春眼をうれふ。一豆腐、菎蒻、薯蕷、芋、慈姑、蓮根などの類、豆油にて煮たるもの、既に冷えて温ならざるは、食ふべからず。一暁の比、腹中鳴動し、食つかへて、腹中不快ば、朝食を減ずべし。気をふさぐ物、肉菓など食ふべからず、酒を飲むべからず。
現代語訳
生姜を八月・九月に食べると、翌春に目を患います。豆腐、こんにゃく、山芋、里芋、慈姑、蓮根などの類を醤油で煮たものは、すでに冷えて温かくなくなっていれば食べてはいけません。明け方に腹が鳴り、食べた物がつかえて腹の具合が悪いときは、朝食を減らすべきです。気をふさぐ物や肉・果物などを食べてはならず、酒を飲んではいけません。
解説
季節の食べ物、冷めた煮物、胃腸の不調時の朝食という三つの注意を並べた単位です。秋の生姜が翌春の目に障るという説は当時の本草の言い伝えですが、季節と体のつながりを意識する姿勢がよく表れています。芋や豆腐の煮物は冷めると消化しにくくなるので温め直して食べる、胃腸が重い朝は食事を減らして休ませるという助言は、今でも体調管理の基本として素直に役立つ内容です。
この章句が説くこと
季節消化朝食冷え養生
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一四時、老幼ともに、あたたかなる物くらふべし。殊に夏月は伏陰内にあり。わかく盛なる人も、あたたかなる物くらふべし。生冷を食すべからず。滞りやすく、泄瀉しやすし。冷水多く飲むべからず。一夏月瓜菓生菜多く食ひ、冷麺をしばしば食し、冷水を多く飲めば、秋必ず瘧痢を病む。凡病は故なくしておこらず。かねてつつしむべし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一多く食ふべからざる物。諸餻餌、糉、寒具、冷麺、麪類、饅頭、河漏、砂糖、醴焼酒、赤小豆、酢、豆油、鰤魚、泥鰌、蛤蜊、鰻鱺魚、鰕章魚、烏賊、鯖魚、並同鰤魚、塩辛、海鰌、生萊菔、胡蘿蔔、薯蕷、菘根、蕪菁、油膩の物、肥濃の物。
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『養生訓』巻第四・飲食下一松蕈、竹筍、豆腐など、味すぐれたる野菜は、只一種煮て食すべし。他物と両種合せ煮れば味おとる。李笠翁が閑情寓寄にかくいへり。味あしければ腸胃に相応せずして、養とならず。一餻餌の新に成りて、再び煮ず、あぶらずして、即ち食するは、消化しがたし。蒸したるより煮たるが、やはらかにして消化しやすし。餻は数日の後焼き煮て食ふに宜し。一朝食肥濃の物ならば、晩食は必ず淡薄に宜し。晩食豊腴ならば、明朝の食は軽くすべし。一諸の食物、陽気の生理ある新しきを食ふべし、毒なし。日久しく歴たる陰気鬱滞せる物、食ふべからず、害あり。煮過して飪を失へるも同じ。
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