養生訓 / 巻第四・飲食下
一鶻突羹は、鮒魚をうすく切りて、山椒など加へ、味噌にて久しく煮たるを云ふ。脾胃を補ふ。脾虛の人、下血する病人などに宜し。大に切りたるは氣をふさぐ、あしし。一凡諸菓の核いまだ成らざるを食ふべからず。菓に雙仁ある物毒あり。山椒口をとぢて開かざるは毒あり。
新字:一鶻突羹は、鮒魚をうすく切りて、山椒など加へ、味噌にて久しく煮たるを云ふ。脾胃を補ふ。脾虚の人、下血する病人などに宜し。大に切りたるは気をふさぐ、あしし。一凡諸菓の核いまだ成らざるを食ふべからず。菓に双仁ある物毒あり。山椒口をとぢて開かざるは毒あり。
書き下し
一鶻突羹は、鮒魚をうすく切りて、山椒など加へ、味噌にて久しく煮たるを云ふ。脾胃を補ふ。脾虚の人、下血する病人などに宜し。大に切りたるは気をふさぐ、あしし。一凡諸菓の核いまだ成らざるを食ふべからず。菓に双仁ある物毒あり。山椒口をとぢて開かざるは毒あり。
現代語訳
鶻突羹とは、鮒を薄く切って山椒などを加え、味噌で長く煮たものをいいます。脾胃を補います。脾の弱い人や下血する病人などによいものです。大きく切ったものは気をふさぐのでよくありません。およそ果物の種がまだ熟していないものは食べてはいけません。果物で仁が二つあるものには毒があります。山椒で口を閉じて開かないものには毒があります。
解説
鮒の味噌煮である鶻突羹を滋養食として紹介し、あわせて果実の危険を注意した単位です。薄く切って長く煮ることで消化しやすくし、弱った胃腸を補う料理として勧めています。未熟な種や二つ仁の実、口の開かない山椒を避けよという注意は、植物の性質に通じた本草学者としての知見に基づくものでしょう。弱った人には消化のよい温かい煮込みを、見慣れない実や未熟な実はうかつに口にしないという教えは、今も家庭で役立つ心得です。
この章句が説くこと
脾胃滋養果物毒調理
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾虚の人は、生魚をあぶりて食するに宜し。煮たるよりつかへず。小魚は煮て食するに宜し。大なる生魚はあぶりて食ひ、或は煎酒を熱くして、生薑わさびなど加へ、浸し食すれば害なし。一大魚は小魚より油多くつかへやすし。脾虚の人は多食すべからず。薄く切りて食へばつかへず。大なる鯉、鮒大に切り、或は全身を煮たるは、気をふさぐ、うすく切るべし。蘿蔔、胡蘿蔔、南瓜、菘根なども、大に厚く切りて煮たるは、つかへやすし。薄く切りて煮るべし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
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『養生訓』巻第三・飲食上一生魚あざらけきに、塩を淡くつけ、日にほし、一両日過ぎて少しあぶり、うすく切りて酒にひたし食ふ。脾に妨なし。久しきは滞りやすし。一味噌、性和にして腸胃を補ふ。たまりと醬油は、味噌より生ずるとなり。泄瀉する人に宜しからず。酢は多く食ふべからず、脾胃に宜しからず。然れども、積聚ある人は少し食してよし。醱醋を多く食ふべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一炙肉すでに炙りて、又熱湯に少しひたし、水毒を去りて食ふべし。不然ば津液をかわかす。又能く喉痹を発す。一茄子、本草等の書に、性不好と云ふ。生なるは毒あり、食ふべからず。煮たるも、瘧痢傷寒などには誠に忌むべし。他病には、皮を去り、切りて米泔に浸し、一夜か半日を歴て、やはらかに煮て食す、害なし。葛粉、水に溲ねて、切りて線条とし、水にて煮又豉汁に堅魚の末を加へ、再び煮て食す。瀉を止め胃を補ふ。保養に益あり。一胃虚弱の人は、蘿蔔、胡蘿蔔、芋、薯蕷、牛蒡など、うすく切りてよく煮たる、食ふべし。大にあつく切りたると、煮ていまだ熟せざると、皆脾胃をやぶる。一度うす豆豉か薄じやうゆにて煮、其汁にひたし置き、半日か一夜か間置きて、再び前の汁にて煮れば、大に切りたるも害なし、味よし。鶏肉、野猪肉なども如此すべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一脾胃のきらふ物は、生しき物、冷なる物、こはき物、ねばる物、けがらはしく清からざる物、くさき物、煑ていまだ熟せざる物、煑過して飪を失へる物、煮て久しくなるもの、菓のいまだ熟せざる物、ふるくして正味を失へる物、五味の偏なる物、あぶら多くして味おもきもの、是皆脾胃のきらふ物なり。是をくらへば脾胃を損ず、食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一朝早く、粥を温にやはらかにして食へば、腸胃をやしなひ、身をあたため、津液を生ず。寒月尤よし。是張来が説なり。一生薑、胡椒、山椒、蓼、紫蘇、生蘿蔔、生葱など、食の香気を助け、悪臭を去り、魚毒を去り、食気をめぐらすために、其食品に相宜しきからき物を少しづつ加へて、毒を殺すべし。多く食すべからず。辛き物多ければ、気をへらし、上升し、血液をかわかす。
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