養生訓 / 巻第四・飲食下
一人の病症によりて、禁宜の食物各かはれり。よく其物の性を考へ、其病に隨ひて、精しく禁宜を定むべし。又婦人懷胎の間、禁物多し。かたく守らしむべし。一豆腐には毒あり、氣をふさぐ。されども、新しきを煮て、飪を失はざる時、早く取りあげ、生萊菔のおろしたるを加へ食すれば、害なし。
新字:一人の病症によりて、禁宜の食物各かはれり。よく其物の性を考へ、其病に随ひて、精しく禁宜を定むべし。又婦人懐胎の間、禁物多し。かたく守らしむべし。一豆腐には毒あり、気をふさぐ。されども、新しきを煮て、飪を失はざる時、早く取りあげ、生萊菔のおろしたるを加へ食すれば、害なし。
書き下し
一人の病症によりて、禁宜の食物各かはれり。よく其物の性を考へ、其病に随ひて、精しく禁宜を定むべし。又婦人懐胎の間、禁物多し。かたく守らしむべし。一豆腐には毒あり、気をふさぐ。されども、新しきを煮て、飪を失はざる時、早く取りあげ、生萊菔のおろしたるを加へ食すれば、害なし。
現代語訳
人の病状によって、避けるべき食物と良い食物はそれぞれ異なります。その食物の性質をよく考え、その病に合わせて、避けるべきものと良いものを詳しく定めるべきです。また妊婦には避けるべき物が多いので、かたく守らせるべきです。豆腐には毒があり、気をふさぎます。けれども、新しいものを煮て、煮えばなを失わないうちに早く引き上げ、生の大根おろしを加えて食べれば害はありません。
解説
病ごとに食べてよい物・悪い物が違うという原則と、豆腐の食べ方を述べた単位です。益軒は一律の健康食を説くのではなく、その人の病と食物の性質を照らし合わせて「禁宜」を決めるよう求めています。豆腐は気をふさぐとしながら、煮えばなに大根おろしを添えて食べれば害がないとする具体的な工夫は、現代の湯豆腐の食べ方にも通じます。持病や妊娠中など、体の状態に合わせて食事を考えるという姿勢は、今の栄養指導の考え方とも重なります。
この章句が説くこと
食禁豆腐妊娠病食事
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一人他郷に行きて、水土かはりて、水土に服せず、わづらふ事あり。先豆腐を食すれば、脾胃調ひやすし。是時珍が食物本草の注に見えたり。一山中の人は、肉食ともしくて、病すくなく命長し。海辺魚肉多き里に住む人は、病多くして命短しと、千金方にいへり。
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『養生訓』巻第四・飲食下一凡の人、食ふべからざる物。生冷の物、堅硬の物、未熟物、ねばき物、ふるくして気味の変じたる物、製法心に叶はざる物、塩からき物、酢の過ぎたる物、飪を失へる物、臭悪しき物、色悪しき物、味変じたる物、魚餒れ肉敗れたる、豆腐の日を歴たると味あしきと、飪を失へると冷えたると、索麪に油あると、諸品煮て未熟と、有灰酒、酸味ある酒、いまだ時ならずして熟せざる物、すでに時過ぎたる物、食ふべからず。夏月、雉食ふべからず。魚鳥の皮こはき物、脂多き物、甚なまぐさき物、諸魚二目同じからざる物、腹下に丹の字ある物、諸鳥みづから死して足伸びざる物、諸獣毒箭にあたりたる物、諸鳥毒をくらつて死したる物、肉の脯、屋漏水にぬれたる物、米器の内に入れ置きたる物、肉汁を器に入れ置きて気をとぢたる物、皆毒あり。肉脯、幷に塩に漬けたる肉、夏を歴て臭味あしき、皆食ふべからず。
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