養生訓 / 巻第四・飲食下
一凡の人、不可食物。生冷の物、堅硬の物、未熟物、ねばき物、ふるくして氣味の變じたる物、製法心に不叶物、鹽からき物、酢の過ぎたる物、飪を失へる物、臭惡しき物、色惡しき物、味變じたる物、魚餒れ肉敗れたる、豆腐の日を歴たると味あしきと、飪を失へると冷えたると、索麪に油あると、諸品煮て未熟と、有灰酒、酸味ある酒、いまだ時ならずして熟せざる物、すでに時過ぎたる物、食ふべからず。夏月、雉不可食。魚鳥の皮こはき物、脂多き物、甚なまぐさき物、諸魚二目同じからざる物、腹下に丹の字ある物、諸鳥みづから死して足伸びざる物、諸獸毒箭にあたりたる物、諸鳥毒をくらつて死したる物、肉の脯、屋漏水にぬれたる物、米器の内に入れ置きたる物、肉汁を器に入れ置きて氣をとぢたる物、皆毒あり。肉脯、幷に鹽に漬けたる肉、夏を歷て臭味あしき、皆食ふべからず。
新字:一凡の人、不可食物。生冷の物、堅硬の物、未熟物、ねばき物、ふるくして気味の変じたる物、製法心に不叶物、塩からき物、酢の過ぎたる物、飪を失へる物、臭悪しき物、色悪しき物、味変じたる物、魚餒れ肉敗れたる、豆腐の日を歴たると味あしきと、飪を失へると冷えたると、索麪に油あると、諸品煮て未熟と、有灰酒、酸味ある酒、いまだ時ならずして熟せざる物、すでに時過ぎたる物、食ふべからず。夏月、雉不可食。魚鳥の皮こはき物、脂多き物、甚なまぐさき物、諸魚二目同じからざる物、腹下に丹の字ある物、諸鳥みづから死して足伸びざる物、諸獣毒箭にあたりたる物、諸鳥毒をくらつて死したる物、肉の脯、屋漏水にぬれたる物、米器の内に入れ置きたる物、肉汁を器に入れ置きて気をとぢたる物、皆毒あり。肉脯、幷に塩に漬けたる肉、夏を歴て臭味あしき、皆食ふべからず。
書き下し
一凡の人、食ふべからざる物。生冷の物、堅硬の物、未熟物、ねばき物、ふるくして気味の変じたる物、製法心に叶はざる物、塩からき物、酢の過ぎたる物、飪を失へる物、臭悪しき物、色悪しき物、味変じたる物、魚餒れ肉敗れたる、豆腐の日を歴たると味あしきと、飪を失へると冷えたると、索麪に油あると、諸品煮て未熟と、有灰酒、酸味ある酒、いまだ時ならずして熟せざる物、すでに時過ぎたる物、食ふべからず。夏月、雉食ふべからず。魚鳥の皮こはき物、脂多き物、甚なまぐさき物、諸魚二目同じからざる物、腹下に丹の字ある物、諸鳥みづから死して足伸びざる物、諸獣毒箭にあたりたる物、諸鳥毒をくらつて死したる物、肉の脯、屋漏水にぬれたる物、米器の内に入れ置きたる物、肉汁を器に入れ置きて気をとぢたる物、皆毒あり。肉脯、幷に塩に漬けたる肉、夏を歴て臭味あしき、皆食ふべからず。
現代語訳
すべての人が食べてはならない物。生もの・冷たい物、硬い物、未熟な物、ねばる物、古くなって味や香りの変わった物、作り方が気に入らない物、塩辛い物、酢のききすぎた物、煮えばなを失った物、臭いの悪い物、色の悪い物、味の変わった物、魚の腐ったもの・肉の傷んだもの、豆腐で日がたったものや味の悪いもの、煮えばなを失ったものや冷えたもの、素麺に油のついたもの、いろいろな品で煮えきっていないもの、灰を入れた酒、酸っぱくなった酒、まだ時季が来ず熟していない物、すでに時季を過ぎた物は、食べてはいけません。夏の雉は食べてはいけません。魚や鳥で皮の硬いもの、脂の多いもの、ひどく生臭いもの、左右の目が同じでない魚、腹の下に丹の字の模様がある魚、自分で死んで足の伸びていない鳥、毒矢に当たった獣、毒を食べて死んだ鳥、干し肉で雨漏りの水にぬれたもの、米びつの中に入れておいたもの、肉汁を器に入れて気を閉じこめておいたものには、みな毒があります。干し肉や塩漬けの肉で、夏を越して臭いや味の悪くなったものは、みな食べてはいけません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一一切の食、陰気の鬱滞せる物は毒あり、食ふべからず。郷党篇にいへる、聖人の食し給はざる物、皆陽気を失ひて、陰物となれるなり。穀肉など、ふたをして時を経たるは、陰鬱の気にて味を変ず。魚鳥の肉など、久しく時をへたる、又塩につけて久しくして色臭味変ず。是皆陽気を失へるなり。菜蔬など、久しければ生気を失ひて、味変ず。如此なるは皆陰物なり、腸胃に害あり。又害なきも補養をなさず。水など新に汲むは、陽気さかんにて生気あり。久しきを歴れば、陰物となり、生気を失ふ。一切の飲食、生気を失ひて、味と臭と色と少しにてもかはりたるは、食ふべからず。干して色かはりたると、塩に浸して不損とは陰物にあらず、食ふに害なし。然れども乾物の気のぬけたると、塩蔵の久しくして、色臭味変じたるも、皆陰物なり、食ふべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
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『養生訓』巻第四・飲食下一多く食ふべからざる物。諸餻餌、糉、寒具、冷麺、麪類、饅頭、河漏、砂糖、醴焼酒、赤小豆、酢、豆油、鰤魚、泥鰌、蛤蜊、鰻鱺魚、鰕章魚、烏賊、鯖魚、並同鰤魚、塩辛、海鰌、生萊菔、胡蘿蔔、薯蕷、菘根、蕪菁、油膩の物、肥濃の物。
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『養生訓』巻第三・飲食上一清き物、かうばしき物、もろく和かなる物、味かろき物、性よき物、此五の物をこのんで食ふべし。益ありて損なし。是に反する物食ふべからず。此事もろこしの書にも見えたり。一衰病虚弱の人は、つねに魚鳥の肉を味よくして、少しづつ食ふべし。参芪の補にまされり。性よき生魚を烹炙よくすべし。塩つけて一両日過ぎたる、尤よし。久しければ味よからず、且滞りやすし。生魚の肉、豉につけたるを炙り煮て食ふもよし。夏月は久しくたもたず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一甚腥く脂多き魚食ふべからず。魚のわたは油多し、食ふべからず。鱁鮧殊につかへやすし、痰を生ず。一さし身鱠は人により斟酌すべし。酢過ぎたるを忌む。虚冷の人はあたため食ふべし。鮓は老人病人食ふべからず。消化しがたし。殊に未熟の時、又熟し過ぎて日をへたる。食ふべからず。えびの鮓毒あり。うなぎの鮓消化しがたし、皆食ふべからず。大なる鳥の皮、魚の皮のあつきは、かたくして油多し、食ふべからず。消じがたし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一一切の宿疾を発する物をば記し置きて、くらふべからず。宿疾とは持病なり。即時に害ある物あり、時をへて害ある物あり。即時に傷なしとて食ふべからず。一傷食の病あらば飲食をたつべし。或は食をつねの半減じ、三分の二減ずべし。傷食の時はやく温湯に浴すべし。魚鳥の肉、魚鳥のひしほ、生菜油膩の物、ねばき物、こはき物、もち、だんご、つくり菓子、生菓子など食ふべからず。
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