養生訓 / 巻第三・飲食上
一人他鄕に行きて、水土かはりて、水土に服せず、わづらふ事あり。先豆腐を食すれば、脾胃調ひやすし。是時珍が食物本草の注に見えたり。一山中の人は、肉食ともしくて、病すくなく命長し。海邊魚肉多き里に住む人は、病多くして命短しと、千金方にいへり。
新字:一人他郷に行きて、水土かはりて、水土に服せず、わづらふ事あり。先豆腐を食すれば、脾胃調ひやすし。是時珍が食物本草の注に見えたり。一山中の人は、肉食ともしくて、病すくなく命長し。海辺魚肉多き里に住む人は、病多くして命短しと、千金方にいへり。
書き下し
一人他郷に行きて、水土かはりて、水土に服せず、わづらふ事あり。先豆腐を食すれば、脾胃調ひやすし。是時珍が食物本草の注に見えたり。一山中の人は、肉食ともしくて、病すくなく命長し。海辺魚肉多き里に住む人は、病多くして命短しと、千金方にいへり。
現代語訳
人が他郷に行って、水や土地が変わって、その水土に合わずに患うことがあります。まず豆腐を食べれば、脾胃が調いやすくなります。これは李時珍の食物本草の注に見えています。山の中の人は、肉食が乏しくて病が少なく命が長いのです。海辺の魚や肉の多い里に住む人は、病が多くて命が短いと、千金方に言っています。
解説
土地が変わって体調を崩す「水あたり」には、まず豆腐を食べよという助言です。明の李時珍は本草学の大著『本草綱目』の著者で、益軒の本草学の大きなよりどころでした。後半は唐の孫思邈の医書『千金方』を引き、肉の乏しい山の人は長命、魚肉の多い海辺の人は短命と述べます。これは巻第二で益軒自身が山中の人の長命を論じた条とも重なります。旅先や引っ越し先で胃腸をこわした時には消化のよい物を取るという心得は、今も役立ちます。
この章句が説くこと
豆腐水土本草長寿旅
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲食下一人の病症によりて、禁宜の食物各かはれり。よく其物の性を考へ、其病に随ひて、精しく禁宜を定むべし。又婦人懐胎の間、禁物多し。かたく守らしむべし。一豆腐には毒あり、気をふさぐ。されども、新しきを煮て、飪を失はざる時、早く取りあげ、生萊菔のおろしたるを加へ食すれば、害なし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一一切の宿疾を発する物をば記し置きて、くらふべからず。宿疾とは持病なり。即時に害ある物あり、時をへて害ある物あり。即時に傷なしとて食ふべからず。一傷食の病あらば飲食をたつべし。或は食をつねの半減じ、三分の二減ずべし。傷食の時はやく温湯に浴すべし。魚鳥の肉、魚鳥のひしほ、生菜油膩の物、ねばき物、こはき物、もち、だんご、つくり菓子、生菓子など食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
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『養生訓』巻第三・飲食上一生魚あざらけきに、塩を淡くつけ、日にほし、一両日過ぎて少しあぶり、うすく切りて酒にひたし食ふ。脾に妨なし。久しきは滞りやすし。一味噌、性和にして腸胃を補ふ。たまりと醬油は、味噌より生ずるとなり。泄瀉する人に宜しからず。酢は多く食ふべからず、脾胃に宜しからず。然れども、積聚ある人は少し食してよし。醱醋を多く食ふべからず。
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『養生訓』巻第四・飲食下一薑を八九月食へば、来春眼をうれふ。一豆腐、菎蒻、薯蕷、芋、慈姑、蓮根などの類、豆油にて煮たるもの、既に冷えて温ならざるは、食ふべからず。一暁の比、腹中鳴動し、食つかへて、腹中不快ば、朝食を減ずべし。気をふさぐ物、肉菓など食ふべからず、酒を飲むべからず。
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