養生訓 / 巻第三・飲食上
一淸き物、かうばしき物、もろく和かなる物、味かろき物、性よき物、此五の物をこのんで食ふべし。益ありて損なし。是に反する物食ふべからず。此事もろこしの書にも見えたり。一衰病虛弱の人は、つねに魚鳥の肉を味よくして、少しづつ食ふべし。參芪の補にまされり。性よき生魚を烹炙よくすべし。鹽つけて一兩日過ぎたる、尤よし。久しければ味よからず、且滯りやすし。生魚の肉、豉につけたるを炙り煮て食ふもよし。夏月は久しくたもたず。
新字:一清き物、かうばしき物、もろく和かなる物、味かろき物、性よき物、此五の物をこのんで食ふべし。益ありて損なし。是に反する物食ふべからず。此事もろこしの書にも見えたり。一衰病虚弱の人は、つねに魚鳥の肉を味よくして、少しづつ食ふべし。参芪の補にまされり。性よき生魚を烹炙よくすべし。塩つけて一両日過ぎたる、尤よし。久しければ味よからず、且滞りやすし。生魚の肉、豉につけたるを炙り煮て食ふもよし。夏月は久しくたもたず。
書き下し
一清き物、かうばしき物、もろく和かなる物、味かろき物、性よき物、此五の物をこのんで食ふべし。益ありて損なし。是に反する物食ふべからず。此事もろこしの書にも見えたり。一衰病虚弱の人は、つねに魚鳥の肉を味よくして、少しづつ食ふべし。参芪の補にまされり。性よき生魚を烹炙よくすべし。塩つけて一両日過ぎたる、尤よし。久しければ味よからず、且滞りやすし。生魚の肉、豉につけたるを炙り煮て食ふもよし。夏月は久しくたもたず。
現代語訳
清らかな物、香ばしい物、もろくて柔らかい物、味の軽い物、性質のよい物、この五つの物を好んで食べなさい。益があって損はありません。これに反する物は食べてはいけません。このことは中国の書にも見えています。衰えた病人や虚弱な人は、いつも魚や鳥の肉を味よくして、少しずつ食べなさい。人参や黄耆の補薬にまさります。性質のよい生魚を、よく煮たり焼いたりしなさい。塩をつけて一、二日たったものが最もよいのです。長くたつと味がよくなく、そのうえ滞りやすいのです。生魚の肉を味噌に漬けたものを焼いたり煮たりして食べるのもよいでしょう。夏は長くもちません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第三・飲食上一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
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『養生訓』巻第三・飲食上一生魚味をよく調へて食すれば、生気ある故、早く消化しやすくしてつかへず、煮過し、又はほして油多き肉、或は塩につけて久しき肉は、皆生気なき陰物なり。滞りやすし。此理を知らで、生魚より塩蔵をよしとすべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一諸の食物、皆あたらしき生気ある物をくらふべし。ふるくして臭あしく、色も味もかはりたる物、皆気をふさぎて滞りやすし。くらふべからず。一すける物は、脾胃のこのむ所なれば、補となる。李笠翁も、本性甚すける物は薬にあつべしといへり。尤此理あり。されど、すけるままに多食すれば、必ずやぶられ、好まざる物を少し食ふにおとる。好む物を少し食はば益あるべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一一切の宿疾を発する物をば記し置きて、くらふべからず。宿疾とは持病なり。即時に害ある物あり、時をへて害ある物あり。即時に傷なしとて食ふべからず。一傷食の病あらば飲食をたつべし。或は食をつねの半減じ、三分の二減ずべし。傷食の時はやく温湯に浴すべし。魚鳥の肉、魚鳥のひしほ、生菜油膩の物、ねばき物、こはき物、もち、だんご、つくり菓子、生菓子など食ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上晩食に飣の数多きは宜しからず。飣多く食ふべからず。魚鳥などの味の濃くあぶら有りて重き物、夕食にあしし。菜類も、薯蕷、胡蘿蔔、菘菜、芋根、慈姑などの如き、滞りやすく、気をふさぐ物、晩食に多く食ふべからず。食はざるは尤よし。一飯のすえり、魚のあざれ、肉のやぶれたる、色のあしき物、臭のあしき物、にえばなをうしなへる物くらはず。朝夕の食時にあらずんば、くらふべからず。又早くしていまだ熟せず、或はいまだ生ぜざる物、根を掘りとりて、芽だちをくらふの類、又時過ぎてさかりを失へる物、皆時ならざる物なり。くらふべからず。是論語にのする所、聖人の食し給はざる物なり。聖人身を慎み給ふ養生の一事なり、法とすべし。又肉は多けれども、飯の気に勝たしめずといへり。肉を多く食ふべからず。食は飯を本とす。何の食も飯より多かるべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
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