養生訓 / 巻第三・飲食上
一食後に、湯茶を以て口を數度すゝぐべし。口中淸く、牙齒にはさまれる物脫し去る。牙杖にてさす事を用ひず、夜は溫なる鹽茶を以て、口をすゝぐべし。牙齒堅固になる。口をすゝぐには、中下の茶を用ふべし。是東坡が說なり。
新字:一食後に、湯茶を以て口を数度すゝぐべし。口中清く、牙歯にはさまれる物脱し去る。牙杖にてさす事を用ひず、夜は温なる塩茶を以て、口をすゝぐべし。牙歯堅固になる。口をすゝぐには、中下の茶を用ふべし。是東坡が説なり。
書き下し
一食後に、湯茶を以て口を数度すすぐべし。口中清く、牙歯にはさまれる物脱し去る。牙杖にてさす事を用ひず、夜は温なる塩茶を以て、口をすすぐべし。牙歯堅固になる。口をすすぐには、中下の茶を用ふべし。是東坡が説なり。
現代語訳
食後には、湯や茶で口を何度もすすぎなさい。口の中が清らかになり、歯の間に挟まった物が取れます。楊枝で突くことは用いません。夜は温かい塩茶で口をすすぎなさい。歯が丈夫になります。口をすすぐには、中や下の品質の茶を用いなさい。これは蘇東坡の説です。
解説
食後の口のすすぎと歯の手入れについての条です。湯や茶で何度もすすげば、歯に挟まった物が取れて口が清らかになり、楊枝で突くより歯を傷めないと言います。夜は温かい塩茶ですすげば歯が丈夫になるという工夫も紹介しています。宋の文人蘇軾(東坡)の説として、上等でない茶で十分だと添えているのも実際的です。歯の健康が体全体の健康や長寿に関わるという考えは今の歯科医学でも重視されており、食後のうがいや歯みがきの習慣の大切さを思い出させます。
この章句が説くこと
歯口衛生養生茶
関連する章句
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『養生訓』巻第五・五官一牙歯をみがき、目を洗ふ法、朝ごとに、まづ熱湯にて目を洗ひあたため、鼻中をきよめ、次に温湯にて口をすすぎ、昨日よりの牙歯の滞を吐きすて、ほしてかわける塩を用ひて、上下の牙歯とはぐきをすりみがき、温湯をふくみ、口中をすすぐ事二三十度、其間に、まづ別の碗に温湯を荒布の小篩を以てこして入れ置き、次に手と面をあらひをはりて、口にふくめる塩湯を、右のあら布の小ぶるひに吐き出し、こして碗に入れ、其塩湯を以て、目を洗ふ事、左右各十五度、其後別に入れ置きたる碗の湯にて、目を洗ひ口をすすぐべし。是にてをはる。毎朝かくの如くにして怠りなければ、久しくして牙歯うごかず、老いてもおちず、虫くはず、目あきらかにして、老にいたりても、目の病なく、夜細字をよみ書く。
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『養生訓』巻第五・五官一熱湯にて口をすすぐべからず、歯を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行歩する事数百歩すべし。飲食して即ち臥せば百病生ず。飲食して仰きに臥せば気痞となる。一医説曰、食して後、体倦むとも、即ち寝ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、縦横に往来する事二十遍、又両手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず、食滞手に随つて消化す。
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『養生訓』巻第五・五官一古人の曰、歯の病は、胃火ののぼる也。毎日時々歯をたたく事三十六度すべし。歯かたくなり、虫くはず、歯の病なし。一わかき時、歯のつよきをたのみて、堅き物を食ふべからず。梅楊梅の核など噛みわるべからず。後年に歯早く落つ。細字を多く書けば、目と歯とを損ず。
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『養生訓』巻第五・五官一臥す時、童子に手を以て合せ擦らせ熱せしめて、わが腎堂を久しく摩でしめ、足心をひさしく摩でしむべし。みづから如此するもよし。又腎堂の下、臀の上をしづかにうたしむべし。一毎夜臥さんとするとき、櫛にて髪をしきりにけづり、湯にて足を洗ふべし。是よく気をめぐらす。又臥にのぞんで、煎茶に塩を加へ、口をすすぐべし。口中を清くし、牙歯を堅くす。下茶よし。
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『養生訓』巻第四・飲食下一東坡曰、早晩の飲食、一爵一肉に過ぎず。尊客あれば三之。へらすべくして、ますべからず。我をよぶ者あれば、是を以てつぐ。一に曰、分を安んじて以て福を養ふ。二に曰、胃を寛くして以て気を養ふ。三に曰、費をはぶきて以て財を養ふ。東坡が此法、倹約養生のため、ともにしかるべし。
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『養生訓』巻第五・五官是目と歯とをたもつ良法なり。こころみて其しるしを得たる人多し。予も亦此法によりて、久しく行ふゆゑ、其しるしに、今八十三歳にいたりて、猶夜細字を書き読み、牙歯固くして一もおちず、目と歯に病なし。毎朝かくのごとくすれば、久しくして後は、ならひてむづかしからず。牙杖にて牙歯をみがく事を用ひず。
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