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養生訓 / 巻第三・飲食上

一肉は一臠を食し、菓は一顆を食しても、味を知る事は、肉十臠を食し菓百顆を食したると同じ。多く食ひて胃をやぶらんより、少し食ひて其味を知り、身に害なきがまされり。一水は淸く甘きを好むべし。淸からざると、味あしきとは用ふべからず。鄕土の水の味によつて、人の性かはる理なれば、水は尤えらぶべし。又惡水のもり入りたる水、飮むべからず。藥と茶を煎ずる水、尤よきをえらぶべし。

新字:一肉は一臠を食し、菓は一顆を食しても、味を知る事は、肉十臠を食し菓百顆を食したると同じ。多く食ひて胃をやぶらんより、少し食ひて其味を知り、身に害なきがまされり。一水は清く甘きを好むべし。清からざると、味あしきとは用ふべからず。郷土の水の味によつて、人の性かはる理なれば、水は尤えらぶべし。又悪水のもり入りたる水、飲むべからず。薬と茶を煎ずる水、尤よきをえらぶべし。

書き下し

一肉は一臠を食し、菓は一顆を食しても、味を知る事は、肉十臠を食し菓百顆を食したると同じ。多く食ひて胃をやぶらんより、少し食ひて其味を知り、身に害なきがまされり。一水は清く甘きを好むべし。清からざると、味あしきとは用ふべからず。郷土の水の味によつて、人の性かはる理なれば、水は尤えらぶべし。又悪水のもり入りたる水、飲むべからず。薬と茶を煎ずる水、尤よきをえらぶべし。

現代語訳

肉は一切れを食べ、果物は一粒を食べても、味を知ることは、肉を十切れ食べ果物を百粒食べたのと同じです。多く食べて胃を損なうより、少し食べてその味を知り、身に害のないほうがまさっています。水は清く甘いものを好みなさい。清らかでないものや味の悪いものは用いてはいけません。郷土の水の味によって人の性質が変わる道理ですから、水は最も選ぶべきです。また汚れた水が漏れ入った水は飲んではいけません。薬と茶を煎じる水は、最もよいものを選びなさい。

解説

前半は、一切れでも味は十分わかるのだから多く食べる必要はないという、腹八分の教えを別の角度から述べたものです。味わう楽しみと量を切り離して考える知恵で、少量をじっくり味わう食べ方につながります。後半からは水の条が始まり、清く甘い水を選べ、土地の水が人の性質を変えるほどだから水選びは大切だと説きます。井戸水に頼った江戸時代には、水の良し悪しが健康を大きく左右しました。飲み水の安全を確かめることの大切さは、今も変わりません。

この章句が説くこと

節度水味わい養生郷土

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