養生訓 / 巻第三・飲食上
一天よりすぐに下る雨水は性よし、毒なし。器にうけて、藥と茶を煎ずるによし。雪水は尤よし。屋漏水大毒あり、たまり水は飮むべからず。たまり水の、地を漏り來る水のむべからず、井のあたりに、汚濁のたまり水あらしむべからず。地をもり通りて井に入る、甚だ忌むべし。
新字:一天よりすぐに下る雨水は性よし、毒なし。器にうけて、薬と茶を煎ずるによし。雪水は尤よし。屋漏水大毒あり、たまり水は飲むべからず。たまり水の、地を漏り来る水のむべからず、井のあたりに、汚濁のたまり水あらしむべからず。地をもり通りて井に入る、甚だ忌むべし。
書き下し
一天よりすぐに下る雨水は性よし、毒なし。器にうけて、薬と茶を煎ずるによし。雪水は尤よし。屋漏水大毒あり、たまり水は飲むべからず。たまり水の、地を漏り来る水のむべからず、井のあたりに、汚濁のたまり水あらしむべからず。地をもり通りて井に入る、甚だ忌むべし。
現代語訳
天からじかに降る雨水は性質がよく、毒がありません。器に受けて、薬や茶を煎じるのによいのです。雪水は最もよいのです。雨漏りの水はひどい毒があります。たまり水は飲んではいけません。たまり水が地面から漏れてくる水も飲んではいけません。井戸のあたりに汚れたたまり水をためてはいけません。地面を漏れ通って井戸に入るのは、甚だ避けるべきことです。
解説
水の種類ごとの良し悪しを述べた条です。空から直接受けた雨水や雪水はよいが、屋根を伝った雨漏りの水や、たまり水、それが地面から染み込んだ水は害があると説きます。井戸の周りに汚水をためるなという注意は、汚水が地下を通って井戸を汚すことを見抜いたもので、衛生の知恵として的確です。今は大気汚染があるので雨水をそのまま飲むことは勧められませんが、飲み水の源を汚さないという考えは、上下水道の整備や水源保護の発想に通じます。
この章句が説くこと
水衛生井戸養生雨水
関連する章句
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『養生訓』巻第四・飲茶烟草附一薬と茶を煎ずるに水をえらぶべし。清く味甘きをよしとす。雨水を用ふるも味よし。雨中に浄器を庭に置きてとる、地水にまさる。然れども是は久しくたもたず、雪水を尤よしとす。一茶を煎ずる法、よわき火にて炒り、つよき火にて煎ず。煎ずるに堅き炭のよくもゆるをさかんに焚きて煎ず。たぎりあがる時冷水をさす。如此すれば茶の味よし。つよき火にて炒るべからず、ぬるくやはらかなる火にて煎ずべからず。右は皆もろこしの書にも出でたり。湯わく時薏苡の生葉を加へて煎ずれば、香味尤よし、性よし。本草に、暑月煎じ飲めば胃を暖め、気血をます。
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『養生訓』巻第七・用薬一凡薬を煎ずるに水をえらぶべし。清くして味よきを用ふ。新に汲む水を用ふべし。早天に汲む水を井華水と云ふ。薬を煎ずべし。又茶と羹を煮るべし。新汲水は、平旦ならでも、新に汲みていまだ器に入れざるを云ふ。是亦用ふべし。汲みて器に入れ久しくなるは用ふべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一肉は一臠を食し、菓は一顆を食しても、味を知る事は、肉十臠を食し菓百顆を食したると同じ。多く食ひて胃をやぶらんより、少し食ひて其味を知り、身に害なきがまされり。一水は清く甘きを好むべし。清からざると、味あしきとは用ふべからず。郷土の水の味によつて、人の性かはる理なれば、水は尤えらぶべし。又悪水のもり入りたる水、飲むべからず。薬と茶を煎ずる水、尤よきをえらぶべし。
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『養生訓』巻第三・飲食上一食は身をやしなふ物なり。身を養ふ物を以て、かへつて身をそこなふべからず。故に、凡食物は、性よくして身をやしなふに益ある物を、つねにえらんで食ふべし。益なくして損ある物、味よしとても食ふべからず。温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉下し、気をふさぎ腹はる物、辛くして熱ある物、皆損あり。
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『養生訓』巻第三・飲食上一酒食を過し、或は時ならずして飲食し、生冷の物、性あしく病をおこす物を食ひて、しばしば泄瀉すれば、必ず胃気へる。久しくかさなりては、元気衰へて短命なり。つつしむべし。一塩と酢と辛き物と、此三味を多く食ふべからず。此三味を多く食ひ、渇きて湯を多くのめば、湿を生じ脾をやぶる。湯、茶、羹多く飲むべからず。右の三味を食つて、大にかわかば、葛の粉か天花粉を、熱湯にたてて呑んで、渇をとどむべし。多く湯をのむ事をやめんがためなり。葛などのねば湯は気をふさぐ。
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