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養生訓 / 巻第三・飲食上

一脾胃虛弱の人、殊に老人は、飮食にやぶられやすし。味よき飮食にむかはば忍ぶべし。節に過ぐべからず。心よわきは慾に勝ちがたし。心つよくして慾にかつべし。一交友と同じく食する時、美饌にむかへば食ひ過ぎやすし。飲食十分に滿足するは、禍の基なり。花は半開に見、酒は微醉に飮むといへるが如くすべし。興に乘じて戒を忘るべからず。欲を恣にすれば禍となる。樂の極まれるは悲の基なり。

新字:一脾胃虚弱の人、殊に老人は、飲食にやぶられやすし。味よき飲食にむかはば忍ぶべし。節に過ぐべからず。心よわきは慾に勝ちがたし。心つよくして慾にかつべし。一交友と同じく食する時、美饌にむかへば食ひ過ぎやすし。飲食十分に満足するは、禍の基なり。花は半開に見、酒は微酔に飲むといへるが如くすべし。興に乗じて戒を忘るべからず。欲を恣にすれば禍となる。楽の極まれるは悲の基なり。

書き下し

一脾胃虚弱の人、殊に老人は、飲食にやぶられやすし。味よき飲食にむかはば忍ぶべし。節に過ぐべからず。心よわきは慾に勝ちがたし。心つよくして慾にかつべし。一交友と同じく食する時、美饌にむかへば食ひ過ぎやすし。飲食十分に満足するは、禍の基なり。花は半開に見、酒は微酔に飲むといへるが如くすべし。興に乗じて戒を忘るべからず。欲を恣にすれば禍となる。楽の極まれるは悲の基なり。

現代語訳

脾胃の弱い人、とくに老人は、飲食に損なわれやすいものです。味のよい飲食に向かったら、こらえなさい。節度を越えてはいけません。心が弱いと欲に勝ちがたいものです。心を強くして欲に勝ちなさい。友人と一緒に食事をする時、よい料理に向かうと食べ過ぎやすいものです。飲食を十分に満足するのは禍のもとです。「花は半開に見、酒はほろ酔いに飲む」と言うようにしなさい。興に乗じて戒めを忘れてはいけません。欲をほしいままにすれば禍となります。楽しみが極まるのは悲しみのもとです。

解説

胃腸の弱い人や老人、そして友人との会食という、食べ過ぎやすい場面を取り上げた条です。とくに会食は、話がはずみ料理もよく、つい度を越しがちです。「花は半開に見、酒は微酔に飲む」は巻第二にも出てくる益軒の好む言葉で、満ちきらない状態にこそ味わいがあるという美意識を表しています。「樂の極まれるは悲の基なり」という結びは、楽しい席でこそ自制を忘れるなという戒めです。宴会や飲み会の多い時期に思い出したい言葉です。

この章句が説くこと

会食節度欲老人楽しみ

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