養生訓 / 巻第二・総論下
一夜書を讀み人とかたるに、三更をかぎりとすべし。一夜を五更にわかつに、三更は國俗の時鼓の四半過、九の間なるべし。深更までねぶらざれば、精神しづまらず。一外境いさぎよければ、中心も亦是にふれて淸くなる。外より内を養ふ理あり。故に居室は常に塵埃をはらひ、前庭も家僕に命じて日々いさぎよく掃はしむべし。みづからも時々机上の埃をはらひ、庭に下りて帚をとりて塵をはらふべし。心をきよくし、身をうごかす、皆養生の助なり。
新字:一夜書を読み人とかたるに、三更をかぎりとすべし。一夜を五更にわかつに、三更は国俗の時鼓の四半過、九の間なるべし。深更までねぶらざれば、精神しづまらず。一外境いさぎよければ、中心も亦是にふれて清くなる。外より内を養ふ理あり。故に居室は常に塵埃をはらひ、前庭も家僕に命じて日々いさぎよく掃はしむべし。みづからも時々机上の埃をはらひ、庭に下りて帚をとりて塵をはらふべし。心をきよくし、身をうごかす、皆養生の助なり。
書き下し
一夜書を読み人とかたるに、三更をかぎりとすべし。一夜を五更にわかつに、三更は国俗の時鼓の四半過、九の間なるべし。深更までねぶらざれば、精神しづまらず。一外境いさぎよければ、中心も亦是にふれて清くなる。外より内を養ふ理あり。故に居室は常に塵埃をはらひ、前庭も家僕に命じて日々いさぎよく掃はしむべし。みづからも時々机上の埃をはらひ、庭に下りて帚をとりて塵をはらふべし。心をきよくし、身をうごかす、皆養生の助なり。
現代語訳
夜に書を読み人と語るのは、三更を限りとしなさい。一夜を五更に分けると、三更はわが国の時の鼓でいえば四つ半過ぎから九つの間でしょう。夜更けまで眠らなければ、精神が静まりません。外の環境が清らかであれば、心の中もまたそれに触れて清らかになります。外から内を養う道理があります。そのため居室は常に塵や埃を払い、前庭も家僕に命じて毎日きれいに掃かせなさい。自分でもときどき机の上の埃を払い、庭に下りて箒を取って塵を払いなさい。心を清くし、体を動かすことは、みな養生の助けとなります。
解説
この章句が説くこと
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『正法眼蔵随聞記』巻五一日雑談の次でに示じて云く、人の心本より善悪なし、善悪は縁に随て起る、喩へば人発心して山林に入る時は、林下はよし人間は悪しとおほゆ、亦退屈の心にて山林を出る時は、山林は悪しとおぼゆ、是れ即ち決定して心に定相なし、縁に随て兎も角もなるなり、かるが故に善縁にあへば心よくなり、悪縁に近づけば心悪くなるなり、我が心本より悪しと思ふことなかれ、只善縁に随ふへきなり、
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『正法眼蔵随聞記』巻六古語に云ふ、倉にすむ鼠、食に飢ゑ、田を耕す牛草に飽かずと、云ふ心は、食の中にありながら食にうゑ、草の中に住しながら草に乏し、人もかくのごとし、仏道の中に有りながら道にかなはざるものなり、名利希求の心止まざれば、一生安楽ならざるなり、
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『正法眼蔵随聞記』巻一示して云く、人は思ひ切て命をも棄て、身肉手足をも截ことは中々せくるゝなり、然あれば世間の事を思ふに、名利執心の為にも多くかくの如く思ひ切るなり、只依り来る時に、事に触れ物に随て、心品を調ふること難きなり、学者身命を捨ると思ふて、且くおしゝづめて、云ふべきことをも、修すべきことをも、道理に順ずるか順せざるかと案じて、道理に順せば云ひ、若くは行じもすべきなり、
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『呻吟語』内篇・修身・心を大にし虛にし平にし潛め定む其の心を大にして天下の物を容れ、其の心を虛にして天下の善を受け、其の心を平にして天下の事を論じ、其の心を潛めて天下の理を觀、其の心を定めて天下の變に應ず。
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