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正法眼蔵随聞記 / 巻五

亦人の心決定して、他に物をとらせじと思へども、他人强て乞ひぬれば、にくしとおもひ、いやながらも與ふるなり、亦決定して與へんと思へども便宜なく、時すぎぬれば亦やむ事も有なり、然あれば學人たとひ道心なくとも、良人に近づき善緣にあふて、同じ事をいくたびも聞見るべきなり、

新字:亦人の心決定して、他に物をとらせじと思へども、他人強て乞ひぬれば、にくしとおもひ、いやながらも与ふるなり、亦決定して与へんと思へども便宜なく、時すぎぬれば亦やむ事も有なり、然あれば学人たとひ道心なくとも、良人に近づき善縁にあふて、同じ事をいくたびも聞見るべきなり、

書き下し

亦人の心決定して、他に物をとらせじと思へども、他人强て乞ひぬれば、にくしとおもひ、いやながらも与ふるなり、亦決定して与へんと思へども便宜なく、時すぎぬれば亦やむ事も有なり、然あれば学人たとひ道心なくとも、良人に近づき善縁にあふて、同じ事をいくたびも聞見るべきなり、

現代語訳

また人の心は決まって、他人に物を取らせまいと思っても、他人が強いて乞うならば、憎いと思い、いやいやながらも与えるのである。また決まって与えようと思っても、都合がつかず時が過ぎてしまえば、また止めることもあるのである。であるから学人は、たとえ道心がなくとも、良い人に近づき、善い縁に逢って、同じ事を何度も聞き、見るべきである。

解説

与える気がないのに与え、与える気があったのに止める。どちらも本人の決意ではなく状況が決めている例である。心が当てにならないという観察から、道心の有無を待たずに環境を整えよという実際的な結論が導かれる。同じことを何度も、という反復の勧めが次の段で展開される。決意を数えるより、場を整えるほうが確かだということである。

この章句が説くこと

縁反復善友道心環境心

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