養生訓 / 巻第二・総論下
一調息の法、呼吸をとゝのへ靜にすれば、息やうやく微なり。彌久しければ、後は鼻中に全く氣息なきが如し。只臍の上より、微息往來する事をおぼゆ。如此すれば神氣定まる。是氣を養ふ術なり。呼吸は一身の氣の出入する道路なり、あらくすべからず。一養生の術、まづ心法をよくつゝしみ守らざれば行はれがたし。心を靜にして、さわがしからず、いかりをおさへ、慾をすくなくして、つねに樂んでうれへず。是養生の術にて、心を守る道なり。心法を守らざれば養生の術行はれず。故に心を養ひ身を養ふの工夫二なし、一術なり。
新字:一調息の法、呼吸をとゝのへ静にすれば、息やうやく微なり。弥久しければ、後は鼻中に全く気息なきが如し。只臍の上より、微息往来する事をおぼゆ。如此すれば神気定まる。是気を養ふ術なり。呼吸は一身の気の出入する道路なり、あらくすべからず。一養生の術、まづ心法をよくつゝしみ守らざれば行はれがたし。心を静にして、さわがしからず、いかりをおさへ、慾をすくなくして、つねに楽んでうれへず。是養生の術にて、心を守る道なり。心法を守らざれば養生の術行はれず。故に心を養ひ身を養ふの工夫二なし、一術なり。
書き下し
一調息の法、呼吸をととのへ静にすれば、息やうやく微なり。弥久しければ、後は鼻中に全く気息なきが如し。只臍の上より、微息往来する事をおぼゆ。如此すれば神気定まる。是気を養ふ術なり。呼吸は一身の気の出入する道路なり、あらくすべからず。一養生の術、まづ心法をよくつつしみ守らざれば行はれがたし。心を静にして、さわがしからず、いかりをおさへ、慾をすくなくして、つねに楽んでうれへず。是養生の術にて、心を守る道なり。心法を守らざれば養生の術行はれず。故に心を養ひ身を養ふの工夫二なし、一術なり。
現代語訳
息を調える法は、呼吸を整えて静かにすれば、息がしだいにかすかになります。いよいよ久しくすれば、しまいには鼻の中にまったく息がないかのようになります。ただ臍の上からかすかな息が行き来するのを感じるだけです。このようにすれば精神が定まります。これが気を養う術です。呼吸は全身の気が出入りする道です。荒くしてはいけません。養生の術は、まず心法をよく慎み守らなければ行われにくいものです。心を静かにして騒がしくせず、怒りを抑え、欲を少なくして、常に楽しんで憂えない。これが養生の術であり、心を守る道です。心法を守らなければ養生の術は行われません。そのため心を養うことと体を養うことの工夫は二つではなく、一つの術なのです。
解説
この章句が説くこと
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