養生訓 / 巻第二・総論下
一内慾をすくなくし、外邪をふせぎ、身を時々勞動し、ねぶりをすくなくす。此の四は養生の大要なり。一氣を和平にし、あらくすべからず。靜かにして、妄に動すべからず。ゆるやかにして急なるべからず。言語をすくなくして、氣をうごかすべからず。つねに氣を臍の下にをさめて、胸にのぼらしむべからず。是氣を養ふ法なり。
新字:一内慾をすくなくし、外邪をふせぎ、身を時々労動し、ねぶりをすくなくす。此の四は養生の大要なり。一気を和平にし、あらくすべからず。静かにして、妄に動すべからず。ゆるやかにして急なるべからず。言語をすくなくして、気をうごかすべからず。つねに気を臍の下にをさめて、胸にのぼらしむべからず。是気を養ふ法なり。
書き下し
一内慾をすくなくし、外邪をふせぎ、身を時々労動し、ねぶりをすくなくす。此の四は養生の大要なり。一気を和平にし、あらくすべからず。静かにして、妄に動すべからず。ゆるやかにして急なるべからず。言語をすくなくして、気をうごかすべからず。つねに気を臍の下にをさめて、胸にのぼらしむべからず。是気を養ふ法なり。
現代語訳
内なる欲を少なくし、外からの邪気を防ぎ、体をときどき動かし、眠りを少なくする。この四つは養生の大要です。気を和らげ平らかにし、荒くしてはいけません。静かにして、むやみに動かしてはいけません。ゆったりとして急いではいけません。言葉を少なくして気を動かしてはいけません。常に気を臍の下に収めて、胸にのぼらせてはいけません。これが気を養う法です。
解説
養生の大要を、内欲を少なくする、外邪を防ぐ、ときどき体を動かす、眠りを少なくする、の四つにまとめ、続けて気を養う法を述べています。気を荒くせず、急がず、言葉を少なくし、臍の下に収めて胸にのぼらせない、というのは前に説いた丹田の法と重なります。益軒の教えは繰り返しが多いのですが、それは大事なことを何度も言い聞かせるためでしょう。怒りや焦りで頭に血がのぼるとき、腹に意識を落とすことは今も有効な対処法です。
この章句が説くこと
養生欲外邪気丹田
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一臍下三寸を丹田と云ふ。腎間の動気ここにあり。難経に、臍下腎間の動気は、人の生命なり。十二経の根本なりといへり。是人身の命根のある所なり。養気の術、つねに腰を正しく据ゑ、真気を丹田にをさめ集め、呼吸をしづめてあらくせず、事にあたつては、胸中より微気をしばしば口に吐き出して、胸中に気をあつめずして、丹田に気をあつむべし。如此すれば、気のぼらず、胸さわがずして、身に力あり。貴人に対して物をいふにも、大事の変にのぞみ、いそがはしき時も、如此すべし。もし止む事を得ずして、人と是非を論ずとも、怒気にやぶられず、浮気ならずして、あやまりなし。或は芸術をつとめ、武人の鎗太刀をつかひ、敵と戦ふにも、皆此法を主とすべし。是事をつとめ気を養ふに益ある術なり。凡技術を行ふ者、殊に武人は、此の法を知らずんばあるべからず。又道士の気を養ひ、比丘の坐禅するも、皆真気を臍下にをさむる法なり。是主静の工夫、術者の秘訣なり。
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