養生訓 / 巻第一・総論上
一凡養生の道は、內慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元氣つよくして外邪おかさず。内慾を愼まずして、元氣よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。內慾をこらふるに、其の大なる條目は、飮食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を發する物をくらはず。色慾をつゝしみて精氣を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、氣をめぐらすべし。殊に食後には、必ず數百步歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穩坐し、ひる寢ね、食氣いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滯りて病を生じ、久しきをつめば、元氣發生せずしてよわくなる。常に元氣をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
新字:一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつゝしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
書き下し
一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
現代語訳
およそ養生の道は、内欲をこらえることを根本とします。根本に努めれば、元気が強くなって外邪も侵しません。内欲を慎まずに元気が弱ければ、外邪に破られやすく、大病となって命を保てません。内欲をこらえるうえでの大きな項目は、飲食をほどほどにして過ごさず、胃腸を傷め病を起こすものを食べないことです。色欲を慎んで精気を惜しみ、時ならぬときに横にならないこと。長く眠ることを戒め、長く座り込まないこと。時々体を動かして気をめぐらせるべきです。とくに食後には必ず数百歩歩くべきです。もし長く座り込んだり、食後にじっと座ったり、昼寝をしたり、食べた物がまだこなれないうちに早く横になって眠ったりすれば、気が滞って病を生じ、それが長く積もれば元気が生じなくなって弱ってしまいます。常に元気を減らすことを惜しんで、言葉を少なくし、七情をほどほどにし、七情の中でもとりわけ怒り・悲しみ・憂い・思い煩いを少なくすべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『初学訓』巻之五一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飲食色慾をこらへて過さず、心を和け気を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑湿の外邪を防ぐべし。飲食色慾は内慾なり。風寒暑湿は外邪なり。つよき人も、内慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長寿なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血気さかんなれば、飲食色慾恣なり。いましむべし。飲食色慾を恣にすれば、元気つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飲食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元気減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飲食色慾の二に傷らるればなり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先心気を養ふべし。心を和かにし、気を平かにし、いかりと慾とをおさへ、うれひ思ひをすくなくし、心をくるしめず、気をそこなはず、是心気を養ふ要道なり。又臥す事を好むべからず。久しく睡り臥せば気滞りてめぐらず。飲食いまだ消化せざるに早く臥し睡れば、食気ふさがりて甚元気をそこなふ。いましむべし。酒は微酔に飲み、半酣をかぎりとすべし。食は半飽に食ひて、十分に満つべからず。酒食ともに限を定めて、節にこゆべからず。又わかき時より、色慾をつつしみ、精気を惜むべし。精気を多くつひやせば、下部の気よわくなり、元気の根本たえて、必ず命短し。もし飲食色慾の慎なくば、日々補薬を服し、朝夕食補をなすとも、益なかるべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいままにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四気なり、風寒暑湿を云ふ。内慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一生を養ふ道は元気を保つを本とす。元気をたもつ道二あり。まづ元気を害する物を去り、又元気を養ふべし。元気を害する物は内慾と外邪となり。すでに元気を害するものを去らば、飲食動静に心を用ひて元気を養ふべし。たとへば田をつくるが如し、まづ苗を害する莠を去りて、後苗に水をそそぎ、肥をして養ふ。養生も亦かくの如し。先害を去りて後よく養ふべし。例へば悪を去りて善を行ふが如くなるべし。気をそこなふ事なくして、養ふ事を多くす。是養生の要なり。つとめ行ふべし。
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