養生訓 / 巻第一・総論上
一生を養ふ道は元氣を保つを本とす。元氣をたもつ道二あり。まづ元氣を害する物を去り、又元氣を養ふべし。元氣を害する物は內慾と外邪となり。すでに元氣を害するものを去らば、飮食動靜に心を用ひて元氣を養ふべし。たとへば田をつくるが如し、まづ苗を害する莠を去りて、後苗に水をそゝぎ、肥をして養ふ。養生も亦かくの如し。先害を去りて後よく養ふべし。例へば惡を去りて善を行ふが如くなるべし。氣をそこなふ事なくして、養ふ事を多くす。是養生の要なり。つとめ行ふべし。
新字:一生を養ふ道は元気を保つを本とす。元気をたもつ道二あり。まづ元気を害する物を去り、又元気を養ふべし。元気を害する物は内慾と外邪となり。すでに元気を害するものを去らば、飲食動静に心を用ひて元気を養ふべし。たとへば田をつくるが如し、まづ苗を害する莠を去りて、後苗に水をそゝぎ、肥をして養ふ。養生も亦かくの如し。先害を去りて後よく養ふべし。例へば悪を去りて善を行ふが如くなるべし。気をそこなふ事なくして、養ふ事を多くす。是養生の要なり。つとめ行ふべし。
書き下し
一生を養ふ道は元気を保つを本とす。元気をたもつ道二あり。まづ元気を害する物を去り、又元気を養ふべし。元気を害する物は内慾と外邪となり。すでに元気を害するものを去らば、飲食動静に心を用ひて元気を養ふべし。たとへば田をつくるが如し、まづ苗を害する莠を去りて、後苗に水をそそぎ、肥をして養ふ。養生も亦かくの如し。先害を去りて後よく養ふべし。例へば悪を去りて善を行ふが如くなるべし。気をそこなふ事なくして、養ふ事を多くす。是養生の要なり。つとめ行ふべし。
現代語訳
生を養う道は、元気を保つことを根本とします。元気を保つ道は二つあります。まず元気を害するものを取り去り、そして元気を養うべきです。元気を害するものは、内欲と外邪です。元気を害するものを取り去ったなら、飲食や動静に心を用いて元気を養うべきです。たとえば田を作るようなものです。まず苗を害する雑草を取り去ってから、苗に水を注ぎ、肥料をやって養います。養生もまたこのようです。まず害を取り去ってから、よく養うべきです。たとえば悪を去って善を行うようにすべきです。気を損なうことをなくして、養うことを多くする。これが養生の要です。努めて行うべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいままにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四気なり、風寒暑湿を云ふ。内慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一人毎日昼夜の間、元気を養ふ事と、元気をそこなふ事との二の多少をくらべ見るべし。衆人は、一日の内、気を養ふ事は常にすくなく、気をそこなふ事は常に多し。養生の道は、元気を養ふ事のみにて、元気をそこなふ事なかるべし。もし養ふ事はすくなく、そこなふ事多く、日々つもりて久しければ、元気へりて病生じ死にいたる。この故に、衆人は病多くして短命なり。かぎりある元気をもちて、かぎりなき慾をほしいままにするは危し。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の害二あり。元気をへらす一なり。元気を滞らしむる二なり。飲食色慾労動を過せば元気やぶれてへる。飲食安逸睡眠を過せば滞りてふさがる。耗ると滞ると皆元気をそこなふ。一心は身の主なり。しづかにして安からしむべし。身は心のやつこなり。うごかして労せしむべし。心やすく静かなれば、天君ゆたかに、くるしみなくして楽しむ。身うごきて労すれば、飲食滞らず、血気めぐりて病なし。
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『養生訓』巻第一・総論上一人の元気は、もと是天地の万物を生ずる気なり。是人身の根本なり。人此の気にあらざれば生ぜず。生じて後は、飲食衣服居処の外物の助によりて、元気養はれて命をたもつ。飲食衣服居処の類も、亦天地の生ずる所なり。生るるも養はるるも、皆天地父母の恩なり。外物を用ひて、元気の養とする所の飲食などをかろく用ひて過さざれば、生れつきたる内の元気を養ひて、いのちながくして天年をたもつ。もし外物の養をおもくし過せば、内の元気外の養にまけて病となる。病おもくして元気尽くれば死す。たとへば草木に水と肥との養を過せば、かじけて枯るるがごとし。故に、人ただ心の内の楽を求めて、飲食などの外の養をかろくすべし。外の養おもければ内の元気損ず。
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