養生訓 / 巻第二・総論下
かやうに事ごとに少くすれば、元氣へらず、脾腎損ぜず。是壽をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とを少くすべし。一時に氣を多く用ひ過し、心を多く用ひ過せば、元氣へり、病となりて、命みじかし。物ごとに數多く、はゞ廣く用ふべからず。數すくなく、はゞせばきがよし。孫思邈が千金方にも、養生の十二少をいへり。其意同じ。目錄は是と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜にかなへるなり。
新字:かやうに事ごとに少くすれば、元気へらず、脾腎損ぜず。是寿をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とを少くすべし。一時に気を多く用ひ過し、心を多く用ひ過せば、元気へり、病となりて、命みじかし。物ごとに数多く、はゞ広く用ふべからず。数すくなく、はゞせばきがよし。孫思邈が千金方にも、養生の十二少をいへり。其意同じ。目録は是と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜にかなへるなり。
書き下し
かやうに事ごとに少くすれば、元気へらず、脾腎損ぜず。是寿をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とを少くすべし。一時に気を多く用ひ過し、心を多く用ひ過せば、元気へり、病となりて、命みじかし。物ごとに数多く、はば広く用ふべからず。数すくなく、はばせばきがよし。孫思邈が千金方にも、養生の十二少をいへり。其意同じ。目録は是と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜にかなへるなり。
現代語訳
このように事ごとに少なくすれば、元気が減らず、脾臓と腎臓が損なわれません。これが寿命を保つ道です。十二に限らず、何事も体のわざと欲とを少なくしなさい。一時に気を多く使い過ぎ、心を多く使い過ぎれば、元気が減り、病となって命が短くなります。物事に数多く、幅広く用いてはいけません。数少なく幅狭いのがよいのです。孫思邈の『千金方』にも養生の十二少を言っています。その意味は同じですが、目録はこれと同じではありません。右に言った十二少は、今の時宜にかなったものです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の要訣一あり。要訣とは、かんえうなる口伝なり。養生に志あらん人は、是を知りて守るべし。其の要訣は、少の一字なり。少とは、万の事皆すくなくして、多くせざるを云ふ。すべてつづまやかに、いはば慾をすくなくするを云ふ。慾とは、耳目口体のむさぼりこのむを云ふ。酒食をこのみ、好色をこのむの類なり。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失ふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目録十二あり。十二少と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飲みものを少くし、五味の偏を少くし、色慾を少くし、言語を少くし、事を少くし、怒を少くし、憂を少くし、悲を少くし、思を少くし、臥す事を少くすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一人毎日昼夜の間、元気を養ふ事と、元気をそこなふ事との二の多少をくらべ見るべし。衆人は、一日の内、気を養ふ事は常にすくなく、気をそこなふ事は常に多し。養生の道は、元気を養ふ事のみにて、元気をそこなふ事なかるべし。もし養ふ事はすくなく、そこなふ事多く、日々つもりて久しければ、元気へりて病生じ死にいたる。この故に、衆人は病多くして短命なり。かぎりある元気をもちて、かぎりなき慾をほしいままにするは危し。
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『養生訓』巻第二・総論下一万の事、皆わが力をはかるべし。力の及ばざるを、強ひて其わざをなせば、気へりて病を生ず。分外をつとむべからず。一わかき時より老にいたるまで、元気を惜むべし。年わかく康健なる時より、はやく養ふべし。つよきを頼みて、元気を用ひ過すべからず。わかき時元気ををしまずして、老いて衰へ、身よわくなりて、初て保養するは、たとへば財多く富める時、おごりて財をつひやし、貧窮になりて財乏しき故、初て倹約を行ふが如し。行はざるにまされどおそくして其しるし少し。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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