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養生訓 / 巻第二・総論下

一養生の要訣一あり。要訣とは、かんえうなる口傳なり。養生に志あらん人は、是を知りて守るべし。其の要訣は、少の一字なり。少とは、萬の事皆すくなくして、多くせざるを云ふ。すべてつゞまやかに、いはば慾をすくなくするを云ふ。慾とは、耳目口體のむさぼりこのむを云ふ。酒食をこのみ、好色をこのむの類なり。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失ふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目錄十二あり。十二少と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飮みものを少くし、五味の偏を少くし、色慾を少くし、言語を少くし、事を少くし、怒を少くし、憂を少くし、悲を少くし、思を少くし、臥す事を少くすべし。

新字:一養生の要訣一あり。要訣とは、かんえうなる口伝なり。養生に志あらん人は、是を知りて守るべし。其の要訣は、少の一字なり。少とは、万の事皆すくなくして、多くせざるを云ふ。すべてつゞまやかに、いはば慾をすくなくするを云ふ。慾とは、耳目口体のむさぼりこのむを云ふ。酒食をこのみ、好色をこのむの類なり。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失ふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目録十二あり。十二少と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飲みものを少くし、五味の偏を少くし、色慾を少くし、言語を少くし、事を少くし、怒を少くし、憂を少くし、悲を少くし、思を少くし、臥す事を少くすべし。

書き下し

一養生の要訣一あり。要訣とは、かんえうなる口伝なり。養生に志あらん人は、是を知りて守るべし。其の要訣は、少の一字なり。少とは、万の事皆すくなくして、多くせざるを云ふ。すべてつづまやかに、いはば慾をすくなくするを云ふ。慾とは、耳目口体のむさぼりこのむを云ふ。酒食をこのみ、好色をこのむの類なり。およそ慾多きのつもりは、身をそこなひ命を失ふ。慾をすくなくすれば、身をやしなひ命をのぶ。慾をすくなくするに、その目録十二あり。十二少と名づく。必ず是を守るべし。食を少くし、飲みものを少くし、五味の偏を少くし、色慾を少くし、言語を少くし、事を少くし、怒を少くし、憂を少くし、悲を少くし、思を少くし、臥す事を少くすべし。

現代語訳

養生の要訣が一つあります。要訣とは肝要な口伝のことです。養生に志のある人は、これを知って守りなさい。その要訣とは「少」の一字です。少とは、万事をみな少なくして多くしないことをいいます。すべて控えめに、言ってみれば欲を少なくすることをいいます。欲とは、耳目口体がむさぼり好むことをいいます。酒食を好み、好色を好むといった類いです。およそ欲が多いことの積み重ねは、身を損ない命を失います。欲を少なくすれば、身を養い命を延ばします。欲を少なくするのに、その目録が十二あります。十二少と名づけます。必ずこれを守りなさい。食を少なくし、飲み物を少なくし、五味の偏りを少なくし、色欲を少なくし、言葉を少なくし、事を少なくし、怒りを少なくし、憂いを少なくし、悲しみを少なくし、思い悩みを少なくし、横になることを少なくしなさい。

解説

養生の要訣を「少」の一字に絞り込み、その目録として十二少を挙げています。食、飲み物、五味の偏り、色欲、言葉、事、怒り、憂い、悲しみ、思い悩み、寝ることを少なくせよ、というものです。本文で数えられるのは十一項目で、残る一つは脱けたものか数え方の違いかは原文からはわかりません。すべてを「少なく」するという発想は、足し算ではなく引き算の健康法です。物も予定も情報も多すぎる今こそ、減らすことの効用を見直したい教えです。

この章句が説くこと

少十二少欲養生節制

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