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養生訓 / 巻第二・総論下

一客となつて、晝より他席にあらば、薄暮より前に歸るべし。夜まで語れば、主客ともに勞す。久しく滯座すべからず。一素問に、怒れば氣上る、喜べば氣緩まる、悲めば氣消ゆ、恐るれば氣めぐらず、寒ければ氣閉づ、暑ければ氣泄る、驚けば氣亂る、勞すれば氣へる、思へば氣結るといへり。百病は皆氣より生ず。病とは氣やむなり。故に養生の道は氣を調ふるにあり。調ふるは氣を和け平かにするなり。凡氣を養ふの道は、氣をへらさゞると、ふさがざるにあり。氣を和け平かにすれば、此二のうれひなし。

新字:一客となつて、昼より他席にあらば、薄暮より前に帰るべし。夜まで語れば、主客ともに労す。久しく滞座すべからず。一素問に、怒れば気上る、喜べば気緩まる、悲めば気消ゆ、恐るれば気めぐらず、寒ければ気閉づ、暑ければ気泄る、驚けば気乱る、労すれば気へる、思へば気結るといへり。百病は皆気より生ず。病とは気やむなり。故に養生の道は気を調ふるにあり。調ふるは気を和け平かにするなり。凡気を養ふの道は、気をへらさゞると、ふさがざるにあり。気を和け平かにすれば、此二のうれひなし。

書き下し

一客となつて、昼より他席にあらば、薄暮より前に帰るべし。夜まで語れば、主客ともに労す。久しく滞座すべからず。一素問に、怒れば気上る、喜べば気緩まる、悲めば気消ゆ、恐るれば気めぐらず、寒ければ気閉づ、暑ければ気泄る、驚けば気乱る、労すれば気へる、思へば気結るといへり。百病は皆気より生ず。病とは気やむなり。故に養生の道は気を調ふるにあり。調ふるは気を和け平かにするなり。凡気を養ふの道は、気をへらさざると、ふさがざるにあり。気を和け平かにすれば、此二のうれひなし。

現代語訳

客となって昼から他家の席にいるなら、夕暮れより前に帰りなさい。夜まで話し込めば、主人も客も疲れます。長く居座ってはいけません。『素問』に、怒れば気がのぼり、喜べば気がゆるみ、悲しめば気が消え、恐れれば気がめぐらず、寒ければ気が閉じ、暑ければ気が漏れ、驚けば気が乱れ、疲れれば気が減り、思い悩めば気が結ぼれる、とあります。すべての病は気から生じます。病とは気が病むことです。そのため養生の道は気を調えることにあります。調えるとは気を和らげ平らかにすることです。およそ気を養う道は、気を減らさないことと、ふさがないことにあります。気を和らげ平らかにすれば、この二つの憂いはありません。

解説

前半は客として長居をせず主客ともに疲れさせない礼儀を、後半は『黄帝内経素問』挙痛論の九気の説を引いて、感情や寒暑が気を乱すことを述べています。「百病は皆気より生ず」「病とは気やむなり」という言葉は、心と体を一体とみる東洋医学の考えをよく表しています。気を減らさずふさがず、和らげ平らかに保つことが養生の要です。心の乱れが体の不調につながることは今の心身医学でも認められており、感情を整える大切さを教えてくれます。

この章句が説くこと

気素問感情病礼儀

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