養生訓 / 巻第二・総論下
一爰に人ありて、寶玉を以てつぶてとし雀をうたば、愚なりとて人必ずわらはん。至りておもき物を捨てて、至りてかろき物を得んとすればなり。人の身は至りておもし。然るに、至りてかろき小なる欲をむさぼりて身をそこなふは、輕重を知らずといふべし。寶玉を以て雀をうつがごとし。
新字:一爰に人ありて、宝玉を以てつぶてとし雀をうたば、愚なりとて人必ずわらはん。至りておもき物を捨てて、至りてかろき物を得んとすればなり。人の身は至りておもし。然るに、至りてかろき小なる欲をむさぼりて身をそこなふは、軽重を知らずといふべし。宝玉を以て雀をうつがごとし。
書き下し
一爰に人ありて、宝玉を以てつぶてとし雀をうたば、愚なりとて人必ずわらはん。至りておもき物を捨てて、至りてかろき物を得んとすればなり。人の身は至りておもし。然るに、至りてかろき小なる欲をむさぼりて身をそこなふは、軽重を知らずといふべし。宝玉を以て雀をうつがごとし。
現代語訳
ここに人がいて、宝玉をつぶてにして雀を打ったら、愚かだと人は必ず笑うでしょう。この上なく重い物を捨てて、この上なく軽い物を得ようとするからです。人の体はこの上なく重いものです。それなのに、この上なく軽い小さな欲をむさぼって体を損なうのは、軽重を知らないというべきです。宝玉で雀を打つようなものです。
解説
宝玉を投げて雀を捕ろうとする愚かさにたとえ、小さな欲のために大切な体を損なう不合理を突いています。このたとえは『荘子』譲王篇の「随侯の珠で雀を弾く」という話を踏まえたものと考えられます。目先の一杯の酒や一皿の美食と、一生の健康とを天秤にかけてみれば、どちらが重いかは明らかです。夜更かしや食べ過ぎなど、つい選んでしまう小さな快楽の代償を冷静に見積もる習慣が、健康を守る第一歩になるでしょう。
この章句が説くこと
養生欲軽重身節制
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