養生訓 / 巻第二・総論下
一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の銳きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。氣のつよきをたのんで、みだりに氣をつかへば氣へる。脾腎のつよきをたのんで、飮食色慾を過せば病となる。
新字:一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
書き下し
一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
現代語訳
養生の道では、頼みにすることを戒めます。自分の体の強さを頼み、若さを頼み、病気が少し治ったことを頼む、これらはみな災いのもとです。刃の鋭さを頼んで硬い物を切れば刃が折れます。気の強さを頼んでむやみに気を使えば気が減ります。脾臓や腎臓の強さを頼んで飲食や色欲を過ごせば病気になります。
解説
養生の敵は「たのむ」心、つまり自分の強さや若さへの過信だと説いています。鋭い刃ほど硬い物に当てて折れるというたとえは、体力のある人ほど無理をして体を壊すという現実をよく言い当てています。益軒自身は生まれつき病弱でしたが、それゆえに慎み、84歳まで長生きしてこの書を著しました。若さや体力に任せた徹夜や暴飲暴食、病み上がりの無理を戒めるこの一節は、働き盛りの人にこそ響く忠告です。
この章句が説くこと
養生過信若さ慎み元気
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