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養生訓 / 巻第一・総論上

一園に草木をうゑて愛する人は、朝夕心にかけて、水をそゝぎ、土をかひ、肥をし、蟲を去りて、よく養ひ、其のさかえを悅び、衰をうれふ。草木は至りてかろし、わが身は至りて重し、豈わが身を愛する事、草木にもしかざるべきや。思はざる事甚し。夫養生の術を行ふ事、天地父母につかへて孝をなし、次にはわが身長生安樂のためなれば、不急なるつとめは先さし置きて、わかき時より、はやく此の術をまなぶべし。身を愼み、生を養ふは、是人間第一のおもくすべき事の至なり。

新字:一園に草木をうゑて愛する人は、朝夕心にかけて、水をそゝぎ、土をかひ、肥をし、虫を去りて、よく養ひ、其のさかえを悦び、衰をうれふ。草木は至りてかろし、わが身は至りて重し、豈わが身を愛する事、草木にもしかざるべきや。思はざる事甚し。夫養生の術を行ふ事、天地父母につかへて孝をなし、次にはわが身長生安楽のためなれば、不急なるつとめは先さし置きて、わかき時より、はやく此の術をまなぶべし。身を慎み、生を養ふは、是人間第一のおもくすべき事の至なり。

書き下し

一園に草木をうゑて愛する人は、朝夕心にかけて、水をそそぎ、土をかひ、肥をし、虫を去りて、よく養ひ、其のさかえを悦び、衰をうれふ。草木は至りてかろし、わが身は至りて重し、豈わが身を愛する事、草木にもしかざるべきや。思はざる事甚し。夫養生の術を行ふ事、天地父母につかへて孝をなし、次にはわが身長生安楽のためなれば、不急なるつとめは先さし置きて、わかき時より、はやく此の術をまなぶべし。身を慎み、生を養ふは、是人間第一のおもくすべき事の至なり。

現代語訳

庭に草木を植えて愛する人は、朝夕気にかけて、水を注ぎ、土を寄せ、肥料をやり、虫を取り除いてよく養い、その茂るのを喜び、衰えるのを憂えます。草木はこのうえなく軽いもの、わが身はこのうえなく重いものです。わが身を愛することが、草木にも及ばないということがあってよいでしょうか。思慮の足りないことはなはだしいものです。そもそも養生の術を行うことは、天地父母に仕えて孝をなし、次にはわが身の長生と安楽のためですから、急がない務めはひとまずさしおいて、若い時から早くこの術を学ぶべきです。身を慎み生を養うことは、人間として第一に重んじるべきことの極みです。

解説

盆栽や庭木には毎日手間をかけるのに、自分の体には無頓着な人への皮肉です。益軒は本草学者として植物に詳しく、草木を養う手間を知り尽くしていたからこそ、このたとえが生きています。現代でも、車やスマートフォンの手入れは怠らないのに、睡眠や食事は後回しという人は多いでしょう。急ぎでない仕事は脇に置いてでも、若いうちから体の手入れを学べという言葉は、忙しさを理由に健康を先送りする私たちへの戒めです。

この章句が説くこと

養生身体草木孝若さ

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