養生訓 / 巻第一・総論上
一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飮食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいまゝにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四氣なり、風寒暑濕を云ふ。內慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元氣をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
新字:一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいまゝにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四気なり、風寒暑湿を云ふ。内慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
書き下し
一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいままにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四気なり、風寒暑湿を云ふ。内慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
現代語訳
養生の術は、まずわが身を損なうものを取り去ることです。身を損なうものは、内欲と外邪です。内欲とは、飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、言葉をほしいままにする欲と、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という七情の欲をいいます。外邪とは天の四気、すなわち風・寒・暑・湿をいいます。内欲をこらえて少なくし、外邪を恐れて防ぐ。こうすれば元気を損なわず、病もなく、天寿を長く保つことができます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『初学訓』巻之五一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飲食色慾をこらへて過さず、心を和け気を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑湿の外邪を防ぐべし。飲食色慾は内慾なり。風寒暑湿は外邪なり。つよき人も、内慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長寿なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血気さかんなれば、飲食色慾恣なり。いましむべし。飲食色慾を恣にすれば、元気つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飲食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元気減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飲食色慾の二に傷らるればなり。
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『養生訓』巻第一・総論上慾をおさへ、心を平にし、気を和かにして暴くせず、静かにして騒がしからず、心はつねに和楽なるべし。憂ひ苦むべからず。是皆内慾をこらへて、元気を養ふ道なり。又風寒暑湿の外邪を防ぎてやぶられず。此の内外の数の慎は、養生の大なる条目なり。是をよく慎み守るべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一生を養ふ道は元気を保つを本とす。元気をたもつ道二あり。まづ元気を害する物を去り、又元気を養ふべし。元気を害する物は内慾と外邪となり。すでに元気を害するものを去らば、飲食動静に心を用ひて元気を養ふべし。たとへば田をつくるが如し、まづ苗を害する莠を去りて、後苗に水をそそぎ、肥をして養ふ。養生も亦かくの如し。先害を去りて後よく養ふべし。例へば悪を去りて善を行ふが如くなるべし。気をそこなふ事なくして、養ふ事を多くす。是養生の要なり。つとめ行ふべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一七情は喜怒哀楽愛悪慾なり。医家にては、喜怒憂思悲恐驚と云ふ。又六慾あり。耳目口鼻身意の慾なり。七情の内、怒と慾との二、尤徳をやぶり生をそこなふ。忿を懲し慾を窒ぐは易の戒なり。忿は陽に属す、火のもゆるが如し。人の心を乱し、元気をそこなふは忿なり、おさへて忍ぶべし。慾は陰に属す、水の深きが如し。人の心をおぼらし、元気をへらすは慾なり。思ひてふさぐべし。
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