養生訓 / 巻第一・総論上
一萬の事、勤めてやまざれば必ずしるしあり。たとへば、春種を蒔きて、夏よく養へば、必ず秋ありてなりはひ多きが如し。もし養生の術を勤めまなびて、久しく行はば、身つよく病なくして、天年をたもち、長生を得て、久しく樂まん事、必然のしるしあるべし。此理うたがふべからず。
新字:一万の事、勤めてやまざれば必ずしるしあり。たとへば、春種を蒔きて、夏よく養へば、必ず秋ありてなりはひ多きが如し。もし養生の術を勤めまなびて、久しく行はば、身つよく病なくして、天年をたもち、長生を得て、久しく楽まん事、必然のしるしあるべし。此理うたがふべからず。
書き下し
一万の事、勤めてやまざれば必ずしるしあり。たとへば、春種を蒔きて、夏よく養へば、必ず秋ありてなりはひ多きが如し。もし養生の術を勤めまなびて、久しく行はば、身つよく病なくして、天年をたもち、長生を得て、久しく楽まん事、必然のしるしあるべし。此理うたがふべからず。
現代語訳
何事も、努めてやめなければ必ず効果があります。たとえば春に種をまいて夏によく手入れをすれば、必ず秋の実りが多いようなものです。もし養生の術を努めて学び、長く実行するならば、体は丈夫で病もなく、天寿を保ち、長生きして長く楽しむことができるという、確かな効果があるはずです。この道理を疑ってはなりません。
解説
種まきと収穫のたとえで、養生は一時の努力ではなく続けることで実を結ぶと説いています。益軒自身、若い頃は体が弱かったと伝えられ、それでも84歳まで著述を続けたことが、この言葉に説得力を与えています。運動や食事の改善は、数日では変化が見えにくいものです。しかし春に蒔いた種が秋に実るように、習慣は季節をまたいで効いてきます。成果を急がず、疑わずに続けること自体が、養生の第一歩だといえます。
この章句が説くこと
養生継続習慣長生勤め
関連する章句
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一身体は日々少しづつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を幾度も徐行すべし。此くの如く日々朝晩運動すれば、鍼灸を用ひずして、飲食気血の滞なくして病なし。鍼灸をして、熱痛甚しき身の苦をこらへんより、かくの如くせば病なくして安楽なるべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一古語に曰く、日に一日を慎めば、寿終るまで殃無し。言は、一日々々をあらためて、朝より夕迄、毎日つつしめば、身にあやまちなく、身をそこなひやぶる事なくして、寿くして天年終るまでわざはひなしとなり。是身をたもつ要道なり。一飲食色慾をほしいままにして、其はじめ、少しの間我心に快き事は、後に必ず身をそこなひ、長きわざはひとなる。後にわざはひ無からん事を求めば、初わが心に快からん事をこのむべからず。万の事、はじめ快くすれば、必ず後の禍となる。初つとめてこらふれば、必ず後の楽となる。
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『養生訓』巻第二・総論下一万の事、皆わが力をはかるべし。力の及ばざるを、強ひて其わざをなせば、気へりて病を生ず。分外をつとむべからず。一わかき時より老にいたるまで、元気を惜むべし。年わかく康健なる時より、はやく養ふべし。つよきを頼みて、元気を用ひ過すべからず。わかき時元気ををしまずして、老いて衰へ、身よわくなりて、初て保養するは、たとへば財多く富める時、おごりて財をつひやし、貧窮になりて財乏しき故、初て倹約を行ふが如し。行はざるにまされどおそくして其しるし少し。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡の人、生れつきたる天年は多くは長じ、天年をみじかく生れつきたる人は、稀なり。生れつきて、元気さかんにして身つよき人も、養生の術をしらず、朝夕元気をそこなひ、日夜精力をへらせば、生れつきたる其の年をたもたずして、早世する人世に多し。又天性は、甚虚弱にして多病なれど、多病なる故に、慎みおそれて保養すれば、かへつて長生する人、是また世にあり。此の二ツは、世間眼前に多く見る所なれば、疑ふべからず。慾を恣にして身をうしなふは、たとへば刀を以て自害するに同じ。早きとおそきとのかはりはあれど、身を害する事は同じ。
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