養生訓 / 巻第二・総論下
一萬の事、皆わが力をはかるべし。力の及ばざるを、强ひて其わざをなせば、氣へりて病を生ず。分外をつとむべからず。一わかき時より老にいたるまで、元氣を惜むべし。年わかく康健なる時より、はやく養ふべし。つよきを賴みて、元氣を用ひ過すべからず。わかき時元氣ををしまずして、老いて衰へ、身よわくなりて、初て保養するは、たとへば財多く富める時、おごりて財をつひやし、貧窮になりて財乏しき故、初て儉約を行ふが如し。行はざるにまされどおそくして其しるし少し。
新字:一万の事、皆わが力をはかるべし。力の及ばざるを、強ひて其わざをなせば、気へりて病を生ず。分外をつとむべからず。一わかき時より老にいたるまで、元気を惜むべし。年わかく康健なる時より、はやく養ふべし。つよきを頼みて、元気を用ひ過すべからず。わかき時元気ををしまずして、老いて衰へ、身よわくなりて、初て保養するは、たとへば財多く富める時、おごりて財をつひやし、貧窮になりて財乏しき故、初て倹約を行ふが如し。行はざるにまされどおそくして其しるし少し。
書き下し
一万の事、皆わが力をはかるべし。力の及ばざるを、強ひて其わざをなせば、気へりて病を生ず。分外をつとむべからず。一わかき時より老にいたるまで、元気を惜むべし。年わかく康健なる時より、はやく養ふべし。つよきを頼みて、元気を用ひ過すべからず。わかき時元気ををしまずして、老いて衰へ、身よわくなりて、初て保養するは、たとへば財多く富める時、おごりて財をつひやし、貧窮になりて財乏しき故、初て倹約を行ふが如し。行はざるにまされどおそくして其しるし少し。
現代語訳
何事も、みな自分の力を量るべきです。力の及ばないことを無理にしようとすれば、気が減って病が生じます。分を越えたことに努めてはいけません。若い時から老年に至るまで、元気を惜しみなさい。若く健康な時から早く養いなさい。強さを頼みにして元気を使い過ぎてはいけません。若い時に元気を惜しまず、年老いて衰え、体が弱くなってから初めて養生するのは、たとえば財産が多く富んでいる時におごって財を費やし、貧しくなって財が乏しくなってから初めて倹約するようなものです。しないよりはましですが、遅すぎてその効き目は少ないのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一人毎日昼夜の間、元気を養ふ事と、元気をそこなふ事との二の多少をくらべ見るべし。衆人は、一日の内、気を養ふ事は常にすくなく、気をそこなふ事は常に多し。養生の道は、元気を養ふ事のみにて、元気をそこなふ事なかるべし。もし養ふ事はすくなく、そこなふ事多く、日々つもりて久しければ、元気へりて病生じ死にいたる。この故に、衆人は病多くして短命なり。かぎりある元気をもちて、かぎりなき慾をほしいままにするは危し。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
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『養生訓』巻第二・総論下かやうに事ごとに少くすれば、元気へらず、脾腎損ぜず。是寿をたもつの道なり。十二にかぎらず、何事も身のわざと欲とを少くすべし。一時に気を多く用ひ過し、心を多く用ひ過せば、元気へり、病となりて、命みじかし。物ごとに数多く、はば広く用ふべからず。数すくなく、はばせばきがよし。孫思邈が千金方にも、養生の十二少をいへり。其意同じ。目録は是と同じからず。右にいへる十二少は、今の時宜にかなへるなり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡の人、生れつきたる天年は多くは長じ、天年をみじかく生れつきたる人は、稀なり。生れつきて、元気さかんにして身つよき人も、養生の術をしらず、朝夕元気をそこなひ、日夜精力をへらせば、生れつきたる其の年をたもたずして、早世する人世に多し。又天性は、甚虚弱にして多病なれど、多病なる故に、慎みおそれて保養すれば、かへつて長生する人、是また世にあり。此の二ツは、世間眼前に多く見る所なれば、疑ふべからず。慾を恣にして身をうしなふは、たとへば刀を以て自害するに同じ。早きとおそきとのかはりはあれど、身を害する事は同じ。
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『養生訓』巻第二・総論下一気を養ふに、嗇の字を用ふべし。老子此意をいへり。嗇はをしむなり。元気ををしみて費さざるなり。たとへば吝嗇なる人の、財多く余あれども、をしみて人にあたへざるが如くなるべし。気ををしめば、元気へらずして長命なり。
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