養生訓 / 巻第二・総論下
一古語曰、日愼一日、壽終無殃。言は、一日々々をあらためて、朝より夕迄、每日つゝしめば、身にあやまちなく、身をそこなひやぶる事なくして、壽くして天年終るまでわざはひなしとなり。是身をたもつ要道なり。一飮食色慾をほしいまゝにして、其はじめ、少しの間我心に快き事は、後に必ず身をそこなひ、長きわざはひとなる。後にわざはひ無からん事を求めば、初わが心に快からん事をこのむべからず。萬の事、はじめ快くすれば、必ず後の禍となる。初つとめてこらふれば、必ず後の樂となる。
新字:一古語曰、日慎一日、寿終無殃。言は、一日々々をあらためて、朝より夕迄、毎日つゝしめば、身にあやまちなく、身をそこなひやぶる事なくして、寿くして天年終るまでわざはひなしとなり。是身をたもつ要道なり。一飲食色慾をほしいまゝにして、其はじめ、少しの間我心に快き事は、後に必ず身をそこなひ、長きわざはひとなる。後にわざはひ無からん事を求めば、初わが心に快からん事をこのむべからず。万の事、はじめ快くすれば、必ず後の禍となる。初つとめてこらふれば、必ず後の楽となる。
書き下し
一古語に曰く、日に一日を慎めば、寿終るまで殃無し。言は、一日々々をあらためて、朝より夕迄、毎日つつしめば、身にあやまちなく、身をそこなひやぶる事なくして、寿くして天年終るまでわざはひなしとなり。是身をたもつ要道なり。一飲食色慾をほしいままにして、其はじめ、少しの間我心に快き事は、後に必ず身をそこなひ、長きわざはひとなる。後にわざはひ無からん事を求めば、初わが心に快からん事をこのむべからず。万の事、はじめ快くすれば、必ず後の禍となる。初つとめてこらふれば、必ず後の楽となる。
現代語訳
古語に「日々に一日を慎めば、寿命の終わるまで災いがない」とあります。その意味は、一日一日を改めて、朝から夕方まで毎日慎めば、身に過ちがなく、身を損ない破ることもなく、長生きして天寿を終えるまで災いがない、ということです。これが身を保つ大切な道です。飲食や色欲をほしいままにして、その初めの少しの間、自分の心に快いことは、後で必ず身を損ない、長い災いとなります。後で災いのないことを求めるなら、初めに自分の心に快いことを好んではいけません。何事も、初めに快くすれば必ず後の災いとなります。初めに努めてこらえれば、必ず後の楽しみとなります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一一時の慾をこらへずして病を生じ、百年の身をあやまる、愚なるかな。長命をたもちて、安楽ならん事を願はば、慾をほしいままにすべからず。慾をこらふるは長命の基なり。慾を恣にするは短命の基なり。恣なると忍ぶとは、是寿夭との分るる所なり。
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『養生訓』巻第二・総論下一人毎日昼夜の間、元気を養ふ事と、元気をそこなふ事との二の多少をくらべ見るべし。衆人は、一日の内、気を養ふ事は常にすくなく、気をそこなふ事は常に多し。養生の道は、元気を養ふ事のみにて、元気をそこなふ事なかるべし。もし養ふ事はすくなく、そこなふ事多く、日々つもりて久しければ、元気へりて病生じ死にいたる。この故に、衆人は病多くして短命なり。かぎりある元気をもちて、かぎりなき慾をほしいままにするは危し。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『初学訓』巻之五一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飲食色慾をこらへて過さず、心を和け気を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑湿の外邪を防ぐべし。飲食色慾は内慾なり。風寒暑湿は外邪なり。つよき人も、内慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長寿なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血気さかんなれば、飲食色慾恣なり。いましむべし。飲食色慾を恣にすれば、元気つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飲食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元気減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飲食色慾の二に傷らるればなり。
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『養生訓』巻第二・総論下一長生の術は、食色の慾をすくなくし、心気を和平にし、事に臨んで常に畏慎あれば、物にやぶられず、血気おのづから調ひて、自然に病なし。如此なれば長生す。是長生の術なり。此術を信じ用ひば、此術の貴ぶべき事、あだかも万金を得たるよりも重かるべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
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