大和俗訓 / 巻之八・応接
一およそ人に交るに、其人よく物いひ、才はたらきて、我が心に叶へりとも、其眸子正しからず、心術うたがはしくば、交を深くすべからず。後に必我が身の害となることあり。悔ゆれども益なし。是久しく世を經て、おほく人に交りて、知る人のいふ所なれば、違ふべからず。若後まで害なきは、是幸なり。家臣をつかふに、殊更此目きゝ心得あるべし。唐の張九齡が、安祿山に叛相あることを、兼て知りたるは、先見の明と云ふべし。才鈍くとも、邪なく、忠實なる人を用ふべし。眼前は快からざれども、後のうれひなく、且わが知らざる所にも益多し。小人を用ひ、小人に交れば、必後の害となる。
新字:一およそ人に交るに、其人よく物いひ、才はたらきて、我が心に叶へりとも、其眸子正しからず、心術うたがはしくば、交を深くすべからず。後に必我が身の害となることあり。悔ゆれども益なし。是久しく世を経て、おほく人に交りて、知る人のいふ所なれば、違ふべからず。若後まで害なきは、是幸なり。家臣をつかふに、殊更此目きゝ心得あるべし。唐の張九齢が、安禄山に叛相あることを、兼て知りたるは、先見の明と云ふべし。才鈍くとも、邪なく、忠実なる人を用ふべし。眼前は快からざれども、後のうれひなく、且わが知らざる所にも益多し。小人を用ひ、小人に交れば、必後の害となる。
書き下し
一およそ人に交るに、其人よく物いひ、才はたらきて、我が心に叶へりとも、其眸子正しからず、心術うたがはしくば、交を深くすべからず。後に必我が身の害となることあり。悔ゆれども益なし。是久しく世を経て、おほく人に交りて、知る人のいふ所なれば、違ふべからず。若後まで害なきは、是幸なり。家臣をつかふに、殊更此目きき心得あるべし。唐の張九齢が、安禄山に叛相あることを、兼て知りたるは、先見の明と云ふべし。才鈍くとも、邪なく、忠実なる人を用ふべし。眼前は快からざれども、後のうれひなく、且わが知らざる所にも益多し。小人を用ひ、小人に交れば、必後の害となる。
現代語訳
およそ人と交わるのに、その人がよく物を言い、才気がはたらいて、自分の心にかなっても、その目つきが正しくなく、心の持ち方が疑わしければ、交わりを深くしてはいけません。後に必ず自分の身の害となることがあります。悔いても益がありません。これは長く世を経て、多く人と交わって知っている人の言うことなので、違えてはいけません。もし後まで害がなければ、それは幸いです。家臣を使うには、とくにこの目利きの心得がなければなりません。唐の張九齢が、安禄山に反逆の相があることを前から知っていたのは、先見の明と言うべきです。才能が鈍くても、邪心がなく忠実な人を用いなさい。目の前では快くなくても、後の憂いがなく、そのうえ自分の知らないところでも益が多いのです。小人を用い、小人と交われば、必ず後の害となります。
解説
この章句が説くこと
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