導師導古典を学びたいすべての人に

大和俗訓 / 巻之八・応接

一心あへば千里も相したしみ、心あはざれば隣家も往來せず。或は日々に對談しても、其心を知らず。或は千里をへだてゝも、其人を相したふ。是心の合ふと合はざるとによれり。心の合へる人まれなり。思ふこといはでたゞにや止みぬべき、我にひとしき人し無ければ。とよみけん事むべなり。世に相知れる人多けれど、同心の人まれなり。其上、人を知ること至てかたし。兄弟にても相知らざること、世に多し。人の我を知らざるを恨むべからず。

新字:一心あへば千里も相したしみ、心あはざれば隣家も往来せず。或は日々に対談しても、其心を知らず。或は千里をへだてゝも、其人を相したふ。是心の合ふと合はざるとによれり。心の合へる人まれなり。思ふこといはでたゞにや止みぬべき、我にひとしき人し無ければ。とよみけん事むべなり。世に相知れる人多けれど、同心の人まれなり。其上、人を知ること至てかたし。兄弟にても相知らざること、世に多し。人の我を知らざるを恨むべからず。

書き下し

一心あへば千里も相したしみ、心あはざれば隣家も往来せず。或は日々に対談しても、其心を知らず。或は千里をへだてても、其人を相したふ。是心の合ふと合はざるとによれり。心の合へる人まれなり。思ふこといはでただにや止みぬべき、我にひとしき人し無ければ。とよみけん事むべなり。世に相知れる人多けれど、同心の人まれなり。其上、人を知ること至てかたし。兄弟にても相知らざること、世に多し。人の我を知らざるを恨むべからず。

現代語訳

心が合えば千里離れていても親しみ合い、心が合わなければ隣の家でも行き来しません。あるいは毎日向き合って話しても、その心を知りません。あるいは千里を隔てても、その人を慕い合います。これは心が合うか合わないかによるのです。心の合う人はまれです。「思ふこといはでたゞにや止みぬべき、我にひとしき人し無ければ」(思うことを言わずにただ黙っていようか、自分と同じ心の人はいないのだから)とよんだのももっともです。世に知り合いは多いけれど、心を同じくする人はまれです。そのうえ、人を知ることはきわめて難しい。兄弟でも互いに知らないことが世に多い。人が自分を知らないのを恨んではいけません。

解説

人の縁は距離ではなく心が合うかどうかで決まると説いています。引かれている歌は『伊勢物語』第百二十四段のもので、心を分かち合える人のいない寂しさを詠んでいます。知り合いは多くても本当に心の通う人はまれで、兄弟でさえ互いを理解していないことが多いと益軒は言います。だからこそ、人に理解されないことを恨むなと結びます。SNSでつながる人は多くても孤独を感じる現代人にとって、心の友の少なさは当然だと受け止めることは、かえって心を軽くしてくれるでしょう。

この章句が説くこと

交友知己孤独伊勢物語知人

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る