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幽夢影 / 巻下・月を邀へて愁ひを言ふ

淸宵獨坐,邀月言愁;良夜孤眠,呼蛩語恨。

新字:清宵独坐,邀月言愁;良夜孤眠,呼蛩語恨。

書き下し

淸宵に獨り坐し、月を邀へて愁ひを言ふ。良夜に孤り眠り、蛩を呼びて恨みを語る。

現代語訳

清らかな夜にひとり座って、月を招いて愁いを打ち明けます。よい夜にひとりで寝て、こおろぎを呼んで恨みごとを語ります。

解説

話し相手のいない夜の寂しさを、月とこおろぎに託した短い対句です。月を招くという発想は、李白が杯を挙げて明月を迎え、自分の影と三人で飲んだという詩を思わせます。蛩はこおろぎのことで、秋の夜に鳴き続ける声は、昔から旅人や独り寝の人の寂しさを誘うものとされてきました。人に言えない思いを、物言わぬ自然に語りかけるしかない姿が、美しくも切なく描かれています。友人の黄孔植は「これは旅先の宿のやるせなさだ、心斎もそれを知っているのか」と評しています。誰にも話せない気持ちを抱えた夜に、空や虫の声が慰めになることは、今の私たちにもあるでしょう。

この章句が説くこと

孤独風雅

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