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大和俗訓 / 巻之八・応接

一我が身を卑下して、人にたかぶらざるは、誠によし。されどあまり卑屈にして、へりくだり過し、つくべき座敷などにも、たやすくつかず、道行くにも、我が先へ行くべき位なれど、辭して行かず、我が前にめぐり來れる盃をも飮まずして、人の言を多くつひやさしむるも、かへりて無禮なり。たゞわが當然なるべき程をほ、あながちに强く辭退すべからず。位ある人、老いたる人、下座にありては、賤しく若き人の居るべき座なくして、各其處を得ざることあり。しかれば卑下するにも、過不及なかるべし。

新字:一我が身を卑下して、人にたかぶらざるは、誠によし。されどあまり卑屈にして、へりくだり過し、つくべき座敷などにも、たやすくつかず、道行くにも、我が先へ行くべき位なれど、辞して行かず、我が前にめぐり来れる盃をも飲まずして、人の言を多くつひやさしむるも、かへりて無礼なり。たゞわが当然なるべき程をほ、あながちに強く辞退すべからず。位ある人、老いたる人、下座にありては、賤しく若き人の居るべき座なくして、各其処を得ざることあり。しかれば卑下するにも、過不及なかるべし。

書き下し

一我が身を卑下して、人にたかぶらざるは、誠によし。されどあまり卑屈にして、へりくだり過し、つくべき座敷などにも、たやすくつかず、道行くにも、我が先へ行くべき位なれど、辞して行かず、我が前にめぐり来れる盃をも飲まずして、人の言を多くつひやさしむるも、かへりて無礼なり。ただわが当然なるべき程をほ、あながちに強く辞退すべからず。位ある人、老いたる人、下座にありては、賤しく若き人の居るべき座なくして、各其処を得ざることあり。しかれば卑下するにも、過不及なかるべし。

現代語訳

自分の身をへりくだって、人に高ぶらないのは、まことによいことです。けれどもあまり卑屈にへりくだり過ぎて、着くべき座敷にもたやすく着かず、道を行くにも、自分が先に行くべき位であるのに辞退して行かず、自分の前にめぐって来た盃も飲まずに、人の言葉を多く費やさせるのも、かえって無礼です。ただ自分の当然であるべきほどのことは、むやみに強く辞退してはいけません。位のある人や老人が下座にいては、身分の低い人や若い人の居るべき座がなくなって、それぞれがその所を得ないことがあります。ですから、へりくだるにも過不及がないようにしなさい。

解説

前の段と対になる教えで、謙遜も度を越せば無礼になると説いています。勧められた席に着かない、先に行くべきところで譲り続ける、回ってきた杯を受けないといった過度の遠慮は、相手に何度も勧めさせる手間をかけさせ、かえって失礼になるというのです。さらに、目上の人が下座に座ると、若い人の座る場所がなくなって全体の秩序が乱れるという指摘は鋭いものです。日本人にありがちな遠慮合戦への戒めとして、今も通用する中庸の知恵です。

この章句が説くこと

謙虚礼中庸遠慮応接

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