論語 / 郷党篇
孔子於鄉黨,恂恂如也,似不能言者。其在宗廟朝廷,便便言,唯謹爾。
新字:孔子於郷党,恂恂如也,似不能言者。其在宗廟朝廷,便便言,唯謹爾。
書き下し
孔子、郷党に於いて、恂恂如たり、言うこと能わざる者に似たり。其の宗廟朝廷に在るや、便便として言い、唯だ謹めるのみ。
現代語訳
孔子は郷里の村里にあっては、まことに素朴で、口もきけない人のようであった。しかし宗廟や朝廷におられるときには、はっきりと弁じられ、ただ言葉づかいだけは慎重であった。
解説
同じ人が、場所によって振る舞いを変えている。郷里では口下手に見えるほど控えめで、公の場では明確に発言する。使い分けているのだが、迎合ではない。郷里は年長者や縁者が秩序を保つ場所であり、そこで持論を述べれば場を乱す。宗廟や朝廷は議論して決める場所であり、そこで黙るのは職務怠慢である。場の性質に応じて、自分の話す量を変えているだけだ。この切り替えができない人は多い。どこでも同じように話す人は、公の場では頼もしいが、私の場では疎まれる。逆に常に控えめな人は、決める場面で役に立たない。話す量は性格ではなく、その場が自分に何を求めているかで決まる。ただし孔子は、どちらの場面でも言葉を慎んだ。切り替えたのは量であって、態度ではない。
この章句が説くこと
場面恂恂如也礼謙虚発言使い分け
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史記 魏公子列伝魏に隠士有り、侯嬴と曰ふ、年七十、家貧しく、大梁の夷門の監者為り。公子これを聞き、往きて請ひ、厚くこれに遺らんと欲す。受くるを肯んぜずして曰く、「臣、身を脩め行ひを絜くすること数十年、終に監門の困しみの故を以て公子の財を受けず」と。公子是に於いて乃ち酒を置きて大いに賓客を会す。坐定まり、公子車騎を従へ、左を虚しくして、自ら夷門の侯生を迎ふ。侯生、敝れたる衣冠を摂め、直ちに上りて公子の上坐に載り、譲らず、以て公子を観んと欲す。公子轡を執ること愈々恭し。侯生また公子に謂ひて曰く、「臣に客の市の屠中に在る有り、願はくは車騎を枉げてこれに過れ」と。公子車を引きて市に入る。侯生下りてその客朱亥に見え、俾倪して故らに久しく立ち、その客と語り、微かに公子を察す。公子の顔色愈々和らぐ。是の時に当たり、魏の将相・宗室・賓客堂に満ち、公子の酒を挙ぐるを待つ。市人皆公子の轡を執るを観る。従騎皆竊かに侯生を罵る。侯生、公子の色の終に変ぜざるを視て、乃ち客に謝して車に就く。家に至り、公子、侯生を引きて上坐に坐せしめ、遍く賓客に賛す、賓客皆驚く。酒酣にして、公子起ち、寿を侯生の前に為す。侯生因りて公子に謂ひて曰く、「今日、嬴の公子の為にするもまた足れり。嬴は乃ち夷門の抱関者なり、而るに公子親ら車騎を枉げ、自ら嬴を衆人広坐の中に迎ふ、宜しく過る所有るべからざるに、今公子故らにこれに過る。然れども嬴は公子の名を就さんと欲す、故に久しく公子の車騎を市中に立たしめ、客に過りて以て公子を観る、公子愈々恭し。市人皆嬴を以て小人と為し、而して公子を以て長者にして能く士に下ると為すなり」と。是に於いて酒を罷め、侯生遂に上客と為る。
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