大和俗訓 / 巻之八・応接
一人の得たる所を以て、得ざる所を信ずべからず。一事得たりといへども、他事には得ざることあり。又得ざる所を以て、得たる所をうたがふべからず。一事得ずといへども、他事に得たることあり。我が得たる所を以て、人の得ざる所を誹るべからず。是恨をとる道なり。
書き下し
一人の得たる所を以て、得ざる所を信ずべからず。一事得たりといへども、他事には得ざることあり。又得ざる所を以て、得たる所をうたがふべからず。一事得ずといへども、他事に得たることあり。我が得たる所を以て、人の得ざる所を誹るべからず。是恨をとる道なり。
現代語訳
人の得意なところをもって、不得意なところまで信じてはいけません。一つのことが得意でも、ほかのことは不得意なことがあります。また不得意なところをもって、得意なところを疑ってはいけません。一つのことが不得意でも、ほかのことは得意なことがあります。自分の得意なところをもって、人の不得意なところをそしってはいけません。これは恨みを買う道です。
解説
一つの分野で優れた人がほかの分野でも優れているとは限らず、一つの分野で劣る人がほかでも劣っているとは限らないという、人を見るときの注意です。今の心理学でいうハロー効果、つまり一部の印象で全体を判断してしまう偏りを戒めたものといえます。さらに、自分の得意分野を物差しにして人の不得意をけなすことは恨みを買うと言います。専門家が自分の分野の常識で他人を見下すと反発を招くのと同じです。人を多面的に見る目の大切さを教えています。
この章句が説くこと
知人人材評価謙虚長所
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