大和俗訓 / 巻之七・躬行下
もし工は器をそさうに作りて詐り、商はあきものを詐りて、利を多くむさぼれば、人信ぜずして、かれが器、うりものを買ふ人すら無くなり、かへりて利を得る事すくなし。漢書に、貪賈は三之、廉賈は五之といへるも、此意なり。言ふ意は、欲ふかき商人は三分の利を得、欲すくなき商人は五分の利を得る。欲ふかき者は、利を得ること少なく、欲すくなき商人は、かへりて利を多く得るとなり。
書き下し
もし工は器をそさうに作りて詐り、商はあきものを詐りて、利を多くむさぼれば、人信ぜずして、かれが器、うりものを買ふ人すら無くなり、かへりて利を得る事すくなし。漢書に、貪賈は三之、廉賈は五之といへるも、此意なり。言ふ意は、欲ふかき商人は三分の利を得、欲すくなき商人は五分の利を得る。欲ふかき者は、利を得ること少なく、欲すくなき商人は、かへりて利を多く得るとなり。
現代語訳
もし職人が器をぞんざいに作ってごまかし、商人が品物をごまかして利を多くむさぼれば、人は信じなくなって、その器や売り物を買う人さえいなくなり、かえって利を得ることが少なくなります。『漢書』に「貪賈は三之、廉賈は五之」とあるのも、この意味です。その意味は、欲の深い商人は三分の利を得、欲の少ない商人は五分の利を得る。欲の深い者は利を得ることが少なく、欲の少ない商人はかえって利を多く得る、ということです。
解説
前の段の続きで、ごまかしで儲けようとする職人や商人は、信用を失って客が離れ、結局は損をすると説きます。『漢書』貨殖伝の言葉を引き、欲深い商人より欲の少ない商人のほうがかえって多く儲けると言います。目先の利益を追って品質を落としたり、表示を偽ったりした企業が信用を失い、市場から退場する例は現代でも繰り返されています。適正な利益で誠実に商う姿勢こそが、長い目で見て最も利益をもたらすという教えです。
この章句が説くこと
商い利信用正直漢書
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