大和俗訓 / 巻之七・躬行下
一古語曰、人の聞かんことをおそれば言ふべからず。人の知らん事をおそれば行ふべからず。是過すくなく、悔すくなく、また禍なき道なり。一善は必日々行ひ、久しく積みかさねて後、其功なりぬ。たとへば補藥を用ひて元氣を補ふが如し。其驗おそし。久しく服して其驗あり。惡は少なりともおそるべし。たとへば毒をくへば忽ち害あるが如し。其驗はやし。惡を去ることはつよき藥を用ひて、病を去るが如くすべし。たちまちに責めざれば身に害あり。
新字:一古語曰、人の聞かんことをおそれば言ふべからず。人の知らん事をおそれば行ふべからず。是過すくなく、悔すくなく、また禍なき道なり。一善は必日々行ひ、久しく積みかさねて後、其功なりぬ。たとへば補薬を用ひて元気を補ふが如し。其験おそし。久しく服して其験あり。悪は少なりともおそるべし。たとへば毒をくへば忽ち害あるが如し。其験はやし。悪を去ることはつよき薬を用ひて、病を去るが如くすべし。たちまちに責めざれば身に害あり。
書き下し
一古語曰、人の聞かんことをおそれば言ふべからず。人の知らん事をおそれば行ふべからず。是過すくなく、悔すくなく、また禍なき道なり。一善は必日々行ひ、久しく積みかさねて後、其功なりぬ。たとへば補薬を用ひて元気を補ふが如し。其験おそし。久しく服して其験あり。悪は少なりともおそるべし。たとへば毒をくへば忽ち害あるが如し。其験はやし。悪を去ることはつよき薬を用ひて、病を去るが如くすべし。たちまちに責めざれば身に害あり。
現代語訳
古語に「人に聞かれることを恐れるなら言ってはいけない。人に知られることを恐れるなら行ってはいけない」とあります。これが過ちが少なく、悔いが少なく、また禍のない道です。善は必ず日々行い、久しく積み重ねてのち、その功が成ります。たとえば補薬を用いて元気を補うようなものです。その効き目は遅い。久しく飲んで効き目があります。悪は小さくても恐れなさい。たとえば毒を食べればたちまち害があるようなものです。その効き目は早い。悪を去ることは、強い薬を用いて病を去るようにしなさい。すぐに攻めなければ身に害があります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『大和俗訓』巻之七・躬行下一善をする事はやすく、善を行ひて、其名聞を求めざる事はかたし。是まことの善なり。人を犯さざる事はやすく、人の我を犯せども、其返報をせざるは難し。一心には古の道を守り行ひ、身の作法は今の世の風俗にそむくべからず。今の世に生れ、古の法にかかはりて、必行はんとするは僻事なり。道に害あり。古法の内、当世にも行はるべき事は行ふべし。当世の時宜にそむくべからず。又当世の風俗に流れて、古の道にそむくは、甚わるし。是道に志なきなり。道は五常五倫を云ふ。法は礼なり、作法を云ふ。
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『大和俗訓』巻之六・躬行上一衆人の行、万事につきて、過と悪とあり。過とは、心に悪なけれども、知らずして理にたがひ、或は心つかずして理にちがふを云ふ。悪とは、善悪は知りながら、慾にひかれて理にたがふを云ふ。是自欺なり。身ををさむるには、過悪をあらためて、善にうつるをつとめとすべし。聖人は過なし。賢者以下は過なきことなし。殊に凡人は過多し。何ぞ今の世に過なき人あらんや。人のいさめを聞きても用ひず、われに過あれども知らずして、あやまち無きと思ふ人あり。是自ら修むるに志なき故なり。もし自ら修むる人は、過多きことを知るべし。自ら省みて我が過を知り、人の諫を聞きて我が過をあらため、善にうつるべし。
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