大和俗訓 / 巻之七・躬行下
一程子曰、財ををしみては、よく善を行ふことなり難し。誠なくしては、善をなす事はなり難しと。此言むべなるかな。財を用ひずして、たゞ言を以て人をかたらふとも、人を救ひがたし。人もまた悅ばずして其人のために忠を盡さざれば功をなすこと成りがたし。項羽を婦人の仁といひしも是なり。又凡の事、いつはりを以て善を行へば、中心より出でざる故、善を行ふに專一ならずして、其事成就せず。誠の善とすべからず。人も亦信とせず。感通の理なし。
新字:一程子曰、財ををしみては、よく善を行ふことなり難し。誠なくしては、善をなす事はなり難しと。此言むべなるかな。財を用ひずして、たゞ言を以て人をかたらふとも、人を救ひがたし。人もまた悦ばずして其人のために忠を尽さざれば功をなすこと成りがたし。項羽を婦人の仁といひしも是なり。又凡の事、いつはりを以て善を行へば、中心より出でざる故、善を行ふに専一ならずして、其事成就せず。誠の善とすべからず。人も亦信とせず。感通の理なし。
書き下し
一程子曰、財ををしみては、よく善を行ふことなり難し。誠なくしては、善をなす事はなり難しと。此言むべなるかな。財を用ひずして、ただ言を以て人をかたらふとも、人を救ひがたし。人もまた悦ばずして其人のために忠を尽さざれば功をなすこと成りがたし。項羽を婦人の仁といひしも是なり。又凡の事、いつはりを以て善を行へば、中心より出でざる故、善を行ふに専一ならずして、其事成就せず。誠の善とすべからず。人も亦信とせず。感通の理なし。
現代語訳
程子が言いました。「財を惜しんでは、よく善を行うことは難しい。誠がなくては、善をなすことは難しい」と。この言葉はもっともです。財を用いずに、ただ言葉で人を説いても、人を救うことは難しい。人もまた喜ばずに、その人のために忠を尽くさなければ、功を成すことは難しい。項羽を「婦人の仁」と言ったのもこれです。またおよそ何事も、偽りで善を行えば、心の中から出ていないので、善を行うのに一途でなく、そのことは成就しません。誠の善とすべきではありません。人もまた信じません。感じて通じ合う理がないのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之三・仁之下一程子の言に、聖賢の仁をいへる処をあつめて見ば、仁を知り得んといへり。今の学者、仁を知らんとならば、孔孟程朱の仁を説き給へる言を、数年の間、心をひそめて、求め味ふべし。急迫にすべからず。誠積み力久しくば、自然に其理を知るべし。若然らずば、聰明博学の人といへども、仁をば知りがたかるべし。
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『童子問』卷上問ふ、先生既に仁を以て聖門の第一字と為し、而して又忠信を以て仁を行ふの地と為すは、何ぞや。曰く、有子曰く、「孝弟なる者は、其れ仁を為すの本か」と。孔子曰く、「忠信を主とす」と。夫れ孝弟は順徳、忠信は実心なり。人若し忠信ならざれば、則ち名は孝と為すと雖も実は孝に非ず、名は忠と為すと雖も実は忠に非ず。礼儀三百・威儀三千、節文度数粲然として観るべしと雖も、皆虚文末節にして、要するに観るに足らず。剪勝の華樹を観るが如し。目を悦ばしむるに足ると雖も、本真に非ず。奚ぞ以て貴しと為すに足らん。故に曰く、「誠ならざれば物無し」と。忠信を仁を行ふの地と為す、亦宜ならずや。
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『慎思録』巻之一仲虺の誥に曰く、克く寛に克く仁に、信を兆民に彰かにすと。六経の仁信を言ふは、此に始まる。又曰く、義を以て事を制し、礼を以て心を制すと。六経の義礼を言ふは、此に始まる。又曰く、天乃ち王に勇智を錫ふと。六経の智勇を言ふは、此に始まる。湯誥に曰く、惟れ皇いなる上帝、衷を下民に降す。恒の性有るに若ひ、克く厥の猷を綏んずるは、惟れ后なりと。六経の性を言ふは、此に始まる。太甲に曰く、鬼神は常に享くること無し、克く誠なるに享くと。六経の誠を言ふは、此に始まる。
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『家道訓』巻之六・用財下一貧しき人は、貨財を以て礼とせず。老いたる人の、筋力を以て礼とせざるが如し。もし貧賤ならざる人は、贈物を以て其誠をあらはす。是古人のなせる所、礼の道なり。父母兄弟親戚朋友或は恩をうけし人には、贈物を以て其の誠をあらはし、其の情を通ずべし。古人、貧しきは束脩をおくり、富めるは玉帛をおくる。吝なる人は、財を惜みて礼なし。おくるべき人におくらず、是吝嗇なるは、不仁にして誠なきによれり。いかんとなれば、我が子には多く財をつひやせどもをしまず。是愛ふかければなり。しかれば財ををしみて贈答の礼なきは、不仁よりおこる。いはんや贈物にさほど財のつひえなし、
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『格言聯璧』從政類・治道の要は人を知るに在り必ず私無くして、斯に上下四旁咸な其の平を得。 治道の要は、人を知るに在り。君德の要は、仁を體するに在り。 臣を禦するの要は、誠を推すに在り。人を用ふるの要は、言を擇ぶに在り。 財を理むるの要は、經制に在り。用を足すの要は、斂を薄くするに在り。
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『長短経』量才紹は累世の資に因り、高議揖譲して以て名誉を収む。士の言を好み外を飾る者は多く之に帰す。公は至心もて人を待ち、誠を推して之を行い、虚美を為さず、倹を以て下を率い、功有る者に与えて恡む所無し。士の忠正遠見にして実有る者は皆な用いられんことを願う。此れ徳の勝、六なり。紹は人の飢寒を見れば、恤念の情、顔色に形る。其の見ざる所は、慮り或いは及ばず。所謂婦人の仁のみ。公は目前の小事に於いて、時に忽せにする所有るも、大事に至りては、四海と相接し、恩の加わる所、皆其の望みに過ぐ。見ざる所と雖も、慮の周る所、済らざる無きなり。此れ仁の勝、七なり。
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