大和俗訓 / 巻之六・躬行上
其費を以て貧人をやしなはゞ、大なる利益なるべし。善を行ふとは、たゞ人の利益になることを行ふにあり。人を利益すれば、天地神明の御心にかなひて、つひに其むくいありて、さいはひを得る理古來そのためし多し。およそ善を行ひて人をすくふこと、上は王公より、下は乞丐にいたるまで、行ふべき道あり。富貴貧賤によらず、たゞ善を行ふ志だにあらば、善行はれずといふことなし。善を行ふべき時にあたりて、心をつくすべし。怠るべからず。まづしく賤しき人も、仁に志して行へば、其身に應じ、日々に人に利益あること多し。いはんや富貴の人其志あれば、人を救ふことひろく、其功大なり。たかきも賤しきも、怠なく久しく行へば、善をつむこと限りなし。
新字:其費を以て貧人をやしなはゞ、大なる利益なるべし。善を行ふとは、たゞ人の利益になることを行ふにあり。人を利益すれば、天地神明の御心にかなひて、つひに其むくいありて、さいはひを得る理古来そのためし多し。およそ善を行ひて人をすくふこと、上は王公より、下は乞丐にいたるまで、行ふべき道あり。富貴貧賤によらず、たゞ善を行ふ志だにあらば、善行はれずといふことなし。善を行ふべき時にあたりて、心をつくすべし。怠るべからず。まづしく賤しき人も、仁に志して行へば、其身に応じ、日々に人に利益あること多し。いはんや富貴の人其志あれば、人を救ふことひろく、其功大なり。たかきも賤しきも、怠なく久しく行へば、善をつむこと限りなし。
書き下し
其費を以て貧人をやしなはば、大なる利益なるべし。善を行ふとは、ただ人の利益になることを行ふにあり。人を利益すれば、天地神明の御心にかなひて、つひに其むくいありて、さいはひを得る理古来そのためし多し。およそ善を行ひて人をすくふこと、上は王公より、下は乞丐にいたるまで、行ふべき道あり。富貴貧賤によらず、ただ善を行ふ志だにあらば、善行はれずといふことなし。善を行ふべき時にあたりて、心をつくすべし。怠るべからず。まづしく賤しき人も、仁に志して行へば、其身に応じ、日々に人に利益あること多し。いはんや富貴の人其志あれば、人を救ふことひろく、其功大なり。たかきも賤しきも、怠なく久しく行へば、善をつむこと限りなし。
現代語訳
その費用で貧しい人を養えば、大きな利益となるでしょう。善を行うとは、ただ人の利益になることを行うことにあります。人に利益を与えれば、天地神明の御心にかなって、ついにその報いがあって幸いを得る理は、昔からその例が多い。およそ善を行って人を救うことは、上は王公から下は乞食に至るまで、行うべき道があります。富貴貧賤によらず、ただ善を行う志さえあれば、善が行われないということはありません。善を行うべき時に当たっては、心を尽くしなさい。怠ってはいけません。貧しく身分の低い人も、仁に志して行えば、その身に応じて、日々人に利益を与えることが多い。まして富貴の人にその志があれば、人を救うことが広く、その功は大きい。身分の高い人も低い人も、怠りなく久しく行えば、善を積むことは限りがありません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・里仁篇子曰わく、いやしくも仁に志せば、悪しきこと無し。
-
『呻吟語』外篇・聖賢・仁天下を覆ふの具は我に在り孔顏の窮居は、其の仁天下を覆ふと為るを害せず。何となれば、仁天下を覆ふの具は我に在り、而して仁天下を覆ふの心は未だ嘗て一日も忘れざればなり。
-
『正法眼蔵随聞記』巻六後に僧正云く、各は僻事とこそ思はるらん、然れども吾が思はくは、衆僧は面々仏道の志し有て集れり、一日絶食して餓死するとも苦しかるべからず、世に交れる人のさしあたりて事欠る苦悩を扶けたらんは、各の為にも利益すぐれたるべしと云へり、まことに道者の案じ入たることかくの如し、
-
『呻吟語』内篇・談道・大擔當と大快樂仁以て己が任と為し、死して後已む、此れは是れ大擔當なり。老者は帛を衣て肉を食らひ、黎民は饑ゑず寒からず、此れは是れ大快樂なり。
-
『慎思録』巻之一学を為すの道は、仁を為すを以て本と為し、忠信を以て主と為し、孝弟を以て先と為し、博文約礼を以て勤めと為し、君子為るを以て志と為す。是れ孔門人を教ふるの規模なり。仁なる者は何ぞや。是れ善を為すの総称、慈愛の理なり。孟子、放心を求むるを以て学問の道と為す。放心を求むる者は、乃ち仁を求むるなり。
-
『大和俗訓』巻之六・躬行上一人と生れては、道に志して、つねに仁を心にたもちて、毎日人に利益ある善事を行ふべし。主君、父母、舅姑、兄長などによくつかへ、家人を愛するは皆善なり。又人をめぐみ救ふこと、また善なり。是皆心をつくして行ふべし。人をめぐみ救ふことは、必財を用ふることの多少によらず。唯人の難儀をすくへば、其功大なり。富める者には、財を多くあたへても益なし。貧しき者に施せば、少しあたへても其利益大なり。たとへば、食にあきたる者に又食をあたふるは益なくして却て病となる。うゑたる者には、少し食を与へても利益ふかきが如し。財を多くつひやしても、無益の事に用ふれば人の助とならず。たとへば、万灯をともしても、あたら油をつひやしたるのみにて利益なし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る