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大和俗訓 / 巻之六・躬行上

一およそ天地、父母、主君、聖人の恩、相ならびて至ておもし。此四恩をわすれそむくは、人にあらずと思ふべし。報いずんばあるべからず。これを報いんと思はゞ、道を學びて行ふにあり。他の道あるべからず。一今の世に、道を敎ふる師は有りがたし。もし有らば貴び仕ふべし。道の敎をうけたる師は、其恩深きこと君父にひとし。又書を讀みならひたる師を、句讀の師と云ふ。其勞はなはだし。藝術の師は、又其次なり。是等は、君父聖人の恩にはならべ難しといへども、其苦勞の恩わするべからず。此外、人の生涯には、恩を受くること多し。およそ人の恩を受けば、心に銘して忘るべからず。一言の情をも感じ、一事の志をも心にかけて思ふべし。人の情あれども感ぜず、人の志をもむなしくするは、無下に心なきなり。

新字:一およそ天地、父母、主君、聖人の恩、相ならびて至ておもし。此四恩をわすれそむくは、人にあらずと思ふべし。報いずんばあるべからず。これを報いんと思はゞ、道を学びて行ふにあり。他の道あるべからず。一今の世に、道を教ふる師は有りがたし。もし有らば貴び仕ふべし。道の教をうけたる師は、其恩深きこと君父にひとし。又書を読みならひたる師を、句読の師と云ふ。其労はなはだし。芸術の師は、又其次なり。是等は、君父聖人の恩にはならべ難しといへども、其苦労の恩わするべからず。此外、人の生涯には、恩を受くること多し。およそ人の恩を受けば、心に銘して忘るべからず。一言の情をも感じ、一事の志をも心にかけて思ふべし。人の情あれども感ぜず、人の志をもむなしくするは、無下に心なきなり。

書き下し

一およそ天地、父母、主君、聖人の恩、相ならびて至ておもし。此四恩をわすれそむくは、人にあらずと思ふべし。報いずんばあるべからず。これを報いんと思はば、道を学びて行ふにあり。他の道あるべからず。一今の世に、道を教ふる師は有りがたし。もし有らば貴び仕ふべし。道の教をうけたる師は、其恩深きこと君父にひとし。又書を読みならひたる師を、句読の師と云ふ。其労はなはだし。芸術の師は、又其次なり。是等は、君父聖人の恩にはならべ難しといへども、其苦労の恩わするべからず。此外、人の生涯には、恩を受くること多し。およそ人の恩を受けば、心に銘して忘るべからず。一言の情をも感じ、一事の志をも心にかけて思ふべし。人の情あれども感ぜず、人の志をもむなしくするは、無下に心なきなり。

現代語訳

およそ天地・父母・主君・聖人の恩は、ともに並んできわめて重い。この四恩を忘れそむくのは、人ではないと思いなさい。報いなければなりません。これに報いようと思うなら、道を学んで行うことにあります。ほかの道はありません。今の世に、道を教える師はめったにいません。もしいれば、尊んで仕えなさい。道の教えを受けた師は、その恩の深いことは君父と同じです。また書物の読み方を習った師を句読の師といいます。その苦労ははなはだしい。芸術の師はまたその次です。これらは君父や聖人の恩には並べがたいけれども、その苦労の恩を忘れてはいけません。このほか、人の生涯には恩を受けることが多い。およそ人の恩を受けたら、心に刻んで忘れてはいけません。一言の情けにも感じ、一事の志も心にかけて思いなさい。人の情けがあっても感じず、人の志をむなしくするのは、ひどく心ないことです。

解説

四恩のまとめとして、それらに報いる道は学んで実践することだけだと述べた後、師の恩へと話を広げています。道を教える師、読み書きを教える師、技芸の師と、段階はあっても、それぞれの苦労の恩を忘れるなと益軒は言います。さらに、生涯に受けるさまざまな恩、たとえ一言の思いやりや小さな心づかいであっても、心に刻んで感謝せよと説きます。学校の先生や職場で仕事を教えてくれた先輩など、自分を育ててくれた人の顔を思い浮かべたくなる一条です。

この章句が説くこと

四恩師恩感謝学問

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