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大和俗訓 / 巻之六・躬行上

一父母に生れ、君にやしなはるゝといへども、聖人の敎なければ、人の道を知らず。道を知らざれば、食にあき、衣をあたゝかに著、居所をやすくしても、人の道なくして禽獸にちかければ、人にむまれたるかひなし。今敎を受けたるいにしへの聖人の恩は、君父にひとし。聖人は萬世の師なり。萬世の後まで、いとたふとぶべし。聖人の恩を報いんとならば、聖人の敎にしたがひ、其道にそむかざるべし。是聖人の恩を報ずる道なり。

新字:一父母に生れ、君にやしなはるゝといへども、聖人の教なければ、人の道を知らず。道を知らざれば、食にあき、衣をあたゝかに著、居所をやすくしても、人の道なくして禽獣にちかければ、人にむまれたるかひなし。今教を受けたるいにしへの聖人の恩は、君父にひとし。聖人は万世の師なり。万世の後まで、いとたふとぶべし。聖人の恩を報いんとならば、聖人の教にしたがひ、其道にそむかざるべし。是聖人の恩を報ずる道なり。

書き下し

一父母に生れ、君にやしなはるるといへども、聖人の教なければ、人の道を知らず。道を知らざれば、食にあき、衣をあたたかに著、居所をやすくしても、人の道なくして禽獣にちかければ、人にむまれたるかひなし。今教を受けたるいにしへの聖人の恩は、君父にひとし。聖人は万世の師なり。万世の後まで、いとたふとぶべし。聖人の恩を報いんとならば、聖人の教にしたがひ、其道にそむかざるべし。是聖人の恩を報ずる道なり。

現代語訳

父母から生まれ、主君に養われるといっても、聖人の教えがなければ、人の道を知りません。道を知らなければ、食に飽き、衣を暖かに着て、住まいを安らかにしても、人の道がなくて鳥獣に近いので、人に生まれたかいがありません。いま教えを受けている昔の聖人の恩は、君父と同じです。聖人は万世の師です。万世の後まで、たいへん尊ぶべきです。聖人の恩に報いようとするなら、聖人の教えに従い、その道にそむかないようにしなさい。これが聖人の恩に報いる道です。

解説

四恩の最後、聖人の恩について述べています。衣食住が満たされても、人としての道を知らなければ生きる意味がない、その道を教えてくれたのが孔子をはじめとする聖人たちだと益軒は言います。聖人は時代を超えた万世の師であり、その恩に報いるには教えに従って生きることだというのです。数千年前の人の言葉が今も人生の指針になるのは不思議なことです。古典を読み、そこから学んだことを実践することが、先人への恩返しになるという考えは、学ぶことの意味を改めて教えてくれます。

この章句が説くこと

聖人恩教え古典学問

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