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大和俗訓 / 巻之五・言語

一主君は言ふに及ばず、父母兄夫の、われに物いひかけたるに、その答明かに聞えざるはうらめし。甚無禮なり。父兄夫など、我に問ふことあらば、ことわりの正しく聞ゆるやうに答ふべし。おや兄夫は、いづれも親しければ、其親しきをたのみて、答のなめげなるは惡しゝ。よき人は、われより下ざまなる人に對しても侮らず。故に答明なり。いはんや我より上なる人をや。

新字:一主君は言ふに及ばず、父母兄夫の、われに物いひかけたるに、その答明かに聞えざるはうらめし。甚無礼なり。父兄夫など、我に問ふことあらば、ことわりの正しく聞ゆるやうに答ふべし。おや兄夫は、いづれも親しければ、其親しきをたのみて、答のなめげなるは悪しゝ。よき人は、われより下ざまなる人に対しても侮らず。故に答明なり。いはんや我より上なる人をや。

書き下し

一主君は言ふに及ばず、父母兄夫の、われに物いひかけたるに、その答明かに聞えざるはうらめし。甚無礼なり。父兄夫など、我に問ふことあらば、ことわりの正しく聞ゆるやうに答ふべし。おや兄夫は、いづれも親しければ、其親しきをたのみて、答のなめげなるは悪しし。よき人は、われより下ざまなる人に対しても侮らず。故に答明なり。いはんや我より上なる人をや。

現代語訳

主君は言うまでもなく、父母や兄や夫が自分に話しかけたのに、その答えがはっきり聞こえないのは、恨めしく思われます。はなはだ無礼です。父や兄や夫などが自分に問うことがあれば、筋道が正しく聞こえるように答えなさい。親や兄や夫は、いずれも親しいので、その親しさを頼みにして答えがぞんざいなのは悪い。よい人は、自分より目下の人に対しても侮りません。だから答えがはっきりしています。まして自分より目上の人に対してはなおさらです。

解説

目上の人に話しかけられたとき、はっきりと筋道立てて答えることは礼儀の基本だという教えです。とくに益軒が戒めるのは、家族のように親しい相手に対する返事のぞんざいさです。親しいからこそ甘えが出て、生返事や不機嫌な態度になりがちなのは、今の家庭でもよくある光景でしょう。よい人は目下の人にさえはっきり答えるという指摘は、相手を問わず丁寧に応じることが人柄の表れであることを示しています。身近な人への返事こそ大切にしたいものです。

この章句が説くこと

礼家族言語敬い返事

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