五常訓 / 巻之四・礼
一凡禮あるを以て人とす。若禮なければ、人の法すたり、鳥獸に同じくなりて、人道たゝず。禮なきの至をいはゞ、父にあうて怒り詈り、母に帚をとらせて、立ちて評語し、君の過惡をそしりあらはし、兄と財をあらそひ奪ひ、東家のかきを越えて、處女をひくの類、皆是禽獸の行なり。人倫の法にあらず。
新字:一凡礼あるを以て人とす。若礼なければ、人の法すたり、鳥獣に同じくなりて、人道たゝず。礼なきの至をいはゞ、父にあうて怒り詈り、母に帚をとらせて、立ちて評語し、君の過悪をそしりあらはし、兄と財をあらそひ奪ひ、東家のかきを越えて、処女をひくの類、皆是禽獣の行なり。人倫の法にあらず。
書き下し
一凡礼あるを以て人とす。若礼なければ、人の法すたり、鳥獣に同じくなりて、人道たたず。礼なきの至をいはば、父にあうて怒り詈り、母に帚をとらせて、立ちて評語し、君の過悪をそしりあらはし、兄と財をあらそひ奪ひ、東家のかきを越えて、処女をひくの類、皆是禽獣の行なり。人倫の法にあらず。
現代語訳
およそ礼があることによって人とします。もし礼がなければ、人の法はすたれ、鳥獣と同じになって、人の道は立ちません。礼のないことの極みをいえば、父に会って怒りののしり、母に箒を取らせて立ったまま言い争い、君の過ちや悪をそしりあばき、兄と財産を争い奪い、東隣の垣根を越えて娘を引き込むような類は、みなこれは禽獣の行いです。人倫の法ではありません。
解説
礼がなければ人は禽獣と同じだとして、礼を失った極端な例を挙げています。父をののしる、母に掃除をさせて立ったまま言い争う、主君の悪をあばく、兄と財産を争う、隣家の娘を誘い出すといった例は、『孟子』告子下の「東家の牆を踰えて其の処子を摟く」など古典にも見える表現です。家族や身近な人に対する礼を失うことが人として最も恥ずべきことだという指摘は、家庭の中の言葉づかいや態度を振り返るきっかけになります。
この章句が説くこと
礼人倫孝禽獣家族
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