大和俗訓 / 巻之五・言語
一世俗のかたり傳ふること、そらごと多し。ことごとく信ずべからず。ことに、あやしき事、多くはいつはりなり。神佛の奇特も、俗人のかたり傳ふることは、そらごと多し。凡正法には奇怪なし。きくわいあるは正法にあらず。奇怪なりとて貴ぶべからず。神佛をほめんとて、なき事をつくり出し、或は似たる事をまことに言ひなし、奇異なることを言ひつけて、かへつて神佛の德をけがすことを知らず。鬼魅狐狸のしわざには奇怪なることもあり。それも多くはそらごとあり。ことごとく信ずべからず。おろかなる人は、そゞろなるそらごとを信じて、まよひやすし。そらごとを作りてかたり傳ふること、世におほし。信ずべからず。妄に人のことばにまかせて、かたり傳ふべからず。人の胡亂なる言を信じて、又人にかたれば、我が亦虛言をいふの罪あり。つゝしんで人にかたるべからず。
新字:一世俗のかたり伝ふること、そらごと多し。ことごとく信ずべからず。ことに、あやしき事、多くはいつはりなり。神仏の奇特も、俗人のかたり伝ふることは、そらごと多し。凡正法には奇怪なし。きくわいあるは正法にあらず。奇怪なりとて貴ぶべからず。神仏をほめんとて、なき事をつくり出し、或は似たる事をまことに言ひなし、奇異なることを言ひつけて、かへつて神仏の徳をけがすことを知らず。鬼魅狐狸のしわざには奇怪なることもあり。それも多くはそらごとあり。ことごとく信ずべからず。おろかなる人は、そゞろなるそらごとを信じて、まよひやすし。そらごとを作りてかたり伝ふること、世におほし。信ずべからず。妄に人のことばにまかせて、かたり伝ふべからず。人の胡乱なる言を信じて、又人にかたれば、我が亦虚言をいふの罪あり。つゝしんで人にかたるべからず。
書き下し
一世俗のかたり伝ふること、そらごと多し。ことごとく信ずべからず。ことに、あやしき事、多くはいつはりなり。神仏の奇特も、俗人のかたり伝ふることは、そらごと多し。凡正法には奇怪なし。きくわいあるは正法にあらず。奇怪なりとて貴ぶべからず。神仏をほめんとて、なき事をつくり出し、或は似たる事をまことに言ひなし、奇異なることを言ひつけて、かへつて神仏の徳をけがすことを知らず。鬼魅狐狸のしわざには奇怪なることもあり。それも多くはそらごとあり。ことごとく信ずべからず。おろかなる人は、そぞろなるそらごとを信じて、まよひやすし。そらごとを作りてかたり伝ふること、世におほし。信ずべからず。妄に人のことばにまかせて、かたり伝ふべからず。人の胡乱なる言を信じて、又人にかたれば、我が亦虚言をいふの罪あり。つつしんで人にかたるべからず。
現代語訳
世俗で語り伝えることには、うそが多い。ことごとく信じてはいけません。とくにあやしいことは、多くは偽りです。神仏の霊験も、俗人の語り伝えることには、うそが多い。およそ正しい教えには奇怪なことはありません。奇怪なことがあるのは正しい教えではありません。奇怪だからといって尊んではいけません。神仏をほめようとして、ないことを作り出し、あるいは似たことを本当のことのように言いなし、奇異なことを言い添えて、かえって神仏の徳をけがすことを知りません。化け物や狐狸のしわざには奇怪なこともあります。それも多くはうそです。ことごとく信じてはいけません。愚かな人は、根拠のないうそを信じて、迷いやすい。うそを作って語り伝えることが世に多い。信じてはいけません。みだりに人の言葉にまかせて語り伝えてはいけません。人のいいかげんな言葉を信じて、また人に語れば、自分もまたうそを言う罪があります。つつしんで人に語ってはいけません。
解説
この章句が説くこと
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