大和俗訓 / 巻之五・言語
一ことば多く、無用の枝葉しげければ、相對する人勞る。同じ事をくりかへせば、聞く人厭く。如此なれば、さし立ちたる用ある道理は聞えず。言すくなく、用あることを言ひて、道理明かに詳なるべし。辭は簡要をたつとぶと、古人もいへり。無用の言を出さず、有用の事をいふべしとなり。
新字:一ことば多く、無用の枝葉しげければ、相対する人労る。同じ事をくりかへせば、聞く人厭く。如此なれば、さし立ちたる用ある道理は聞えず。言すくなく、用あることを言ひて、道理明かに詳なるべし。辞は簡要をたつとぶと、古人もいへり。無用の言を出さず、有用の事をいふべしとなり。
書き下し
一ことば多く、無用の枝葉しげければ、相対する人労る。同じ事をくりかへせば、聞く人厭く。如此なれば、さし立ちたる用ある道理は聞えず。言すくなく、用あることを言ひて、道理明かに詳なるべし。辞は簡要をたつとぶと、古人もいへり。無用の言を出さず、有用の事をいふべしとなり。
現代語訳
言葉が多く、無用な枝葉が茂れば、向かい合う人が疲れます。同じことを繰り返せば、聞く人は飽きます。このようであれば、肝心の用件の道理は伝わりません。言葉を少なくし、用のあることを言って、道理を明らかにくわしくすべきです。「言葉は簡潔で要を得ていることを尊ぶ」と古人も言いました。無用の言葉を出さず、有用のことを言いなさい、ということです。
解説
話の上手な伝え方についての実践的な助言です。余計な前置きや脱線が多く、同じことを繰り返せば、聞き手は疲れて肝心の要点が伝わらなくなります。益軒は、必要なことを簡潔に、しかし筋道ははっきりと話せと言います。これは今のビジネスで言う「結論から話す」「要点を絞る」という心得そのものです。会議の発言や報告、メールの文面でも、短く要点を押さえることが相手の時間を大切にし、自分の考えを確実に伝える近道になるでしょう。
この章句が説くこと
言語簡潔伝え方要点会話
関連する章句
-
『韓非子』難言第三多言繁稱にして、類を連ね物を比ぶれば
-
『慎思録』巻之二事を記す者は必ず其の要を提げ、言を纂むる者は必ず其の玄を鉤る。凡そ学者の読書の法、当に此くの如くすべし。然るに其の事を記し言を纂むる者、嘉言善行の世教に益有る者を採らずして、好んで猥紬駁雑奇怪妄誕の説を載す。以て益と為すに足らず、適に以て人を惑はすに足る。
-
孟子・離婁章句下孟子曰く、「博く學びて詳かに之を說くは、將に以て反って約を說かんとすればなり。」 <解説> 孔子の教学の要旨とされている、「博文約礼」について述べられた節である。『論語』第六雍也篇に「君子博く文を学びて、之を約するに禮を以てせば、亦た以て畔かざるべきか。」とある。この文章の趣旨と合わせて、この節を理解すべきである。
-
『酔古堂剣掃』集醒・書中の眼目を尋ね出す書を讀むは、須らく書中の眼目を尋ね出して始めて得べし。
-
言志四録・言志後録 第二百二条 宋明二史は今に近し宋明の二史は、事跡人情、今に於て近しと為す。但だ巻帙浩瀚なり。能く其の要処を抽きて之を読みて可なり。
-
『墨子』貴義子墨子、南のかた遊びて衛に使いす。關中に書を載すること甚だ多し。唐子、見て之を怪しみて曰く、「吾が夫子、公尚過に教えて曰く、『曲直を揣るのみ』と。今、夫子、書を載すること甚だ多し、何ぞ有らんや」と。子墨子曰く、「昔者、周公旦、朝に書百篇を讀み、夕に七十士を見る。故に周公旦、天子を佐相し、其の脩、今に至る。翟、上は君上の事無く、下は耕農の難無し。吾れ安んぞ敢えて此を廢せんや。翟、之を聞く、歸を同じくするの物、信に誤る者有り。然り而して民の聴、鈞しからず。是を以て書多きなり。今、過の心の若き者は、數しば精微に逆う。歸を同じくするの物、既に已に其の要を知れり。是を以て教うるに書を以てせざるなり。而るに子、何ぞ怪しまんや」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る